姫と筋肉 誕生(7)
「レリーフ、コイツらを倒して」
我々に立ち塞がるのは4匹のスライム。とは言っても私は丸腰だ。私の背嚢は走るのに邪魔になってるのを見かねてデルさんが取ると消え失せた。彼女はザパンさんから収納のスキルを借りてると言っていた。その背嚢に私のワンドが突き刺してあったのだが問題は無い。私は魔法使い。しかも古代魔法の使い手。古代魔法は儀式で契約する事でマナを変質して魔法として蓄える事が出来る。朝起きた時に契約しているので、4発のファイヤーボルトを放つ事が出来る。
「わかった」
私は前に出て魔法を解放する。
「ファイヤーボルト!」
私の放った炎の矢は1匹のスライムに突き刺さり絶命させた。
「これでいいか」
パッチーン。
何故か私は頭をはたかれる。
「これでいいかじゃないわ。スライム如きに魔法を使わない」
「え、じゃあ、どうやって倒すんだ?」
「素手よ素手!」
そう言うとデルさんはスタスタ歩いて1匹のスライムに近づくとそのまま踏み潰した。まじか!
「やりなさい。スライムなんて虫ケラと一緒よ」
「無理無理、無理ですって」
問答無用で私はスライムの方に押しやられる。
「ていっ!」
私はスライムを踏みつけようとするが弾かれる。尻もちついた私にスライムが飛んでくる。
「ガボボボボボッ」
いっぱいまで視界に広がったスライムが私の顔を包み込む。かわせない! なんか口に入ってくる!
べしゃっ。
「ゴホッ、ゴホゴホッ」
デルさんが引き剥がしてスライムを捨てて何とか命拾いした。
「あんた、まずは戦い以前だね」
床に座っている私をデルさんが見下ろしている。何言ってるんだ? 私は魔法使い。後衛なのに。けど、大の男なのに少女にこんな事言われて情けないと言うよりも、悔しい。
「はい、13、14。もう終わりなの? 貧弱過ぎるでしょ」
私がさせられてるのは腕立て伏せ。もう限界だ。私は地面に倒れ込む。我ながら情けなさ過ぎる。
「かたじけないです」
「はい。飲むのよ口を開けて」
私は横を向き、デルさんの手から出た液体を飲み干す。なにかの薬みたいだが詳細はわからない。これを飲むと、一瞬にしてパンパンになった腕の痛みが消える。疲労は残ってるが。
「じゃ、元気になったら再開」
私は少し休み、腕立て伏せを再開する。
「111、112、113」
デルさんのカウントに合わせて腕立て伏せをする。もう駄目だ。私は突っ伏し、またデルさんの手から出た液体を口にする。そしてまた、腕立て伏せを続ける。
筋トレを限界までして、薬で癒して貰う。そして、デルさん特製の豆料理を限界まで食べる。筋トレは、腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットと満遍なく繰り返される。始めはなんでこんな事をしないといけないのかと嫌々だったが、少しづつ楽しくなってきた。限界を超えて癒してもらう度に、少しづつ回数が増えていく。しかも、どんなに頑張っても肉がつかなかった私の体に少しづつ変化が。よく骸骨みたいと言われていた私の手足が少しづつ大きくなっていく。
そして、私は終わる事なくトレーニングを続けて行った。