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 姫と筋肉 誕生(5)


「じゃ、どうやって鍛えるっすか?」


 赤毛の娘が口を開く。この時はもう魔法が解けていたので、思考は正常だ。鍛える? この方たちは私たちを鍛えてどうする積もりなんだ? 


「せっかく4人いる事だし、マンツーマンでいいんじゃない?」


 エルフのデルさんが口を開く。なんと、マンツーマン! 正直誰とあたってもいい。この私のような世間から蛇蠍のように嫌われるダークエルフが、こんなに可愛い女の子とマンツーマンで、鍛えて貰える? それって夢なんじゃないか! そう思っていた時期が私にもありました。実際は夢のような体験ではなく、思い出すだけで怖気がする悪夢の始まりだった。


「じゃあ、ただ鍛えるだけじゃつまんないから、一番強く出来た人が、最下位から好きなスイーツを奢ってもらうってのでどう?」


 ルルさんが満面の笑みで提案する。我々には鍛えて貰うという選択肢しかないみたいだ。しかも優劣を付けられる事になりそうだ。私の仲間たちは誰1人として口を開かない。デルさんの人外っぷりを見たお陰で怯えているのだろう。そう言う私も沈黙を守る。不用意な一言で彼女らの機嫌を損ねたら、私はどうなるか解らない。


「それいいっすねー」


 赤毛娘が賛同し、他の3人も頷く。どうやら我々は彼女たちにマンツーマンで鍛えられて、競わされるみたいだ。


「じゃ、くじ引きするっすよ」


 即席でクジが作られた。不透明なカップに先に色がついた棒が4本入ったものを2セット。デュパンが持ったのを少女達が引き、赤毛娘が持ったのを我々が引く事になる。パム、ジニーが引き、私が引き、残りはデュパンだ。少女達はもう引き終わっている。私は黄色、黄色のクジを持ってたのは、エルフのデルさんだった。私は運命や因縁めいたものを感じた。エルフとダークエルフは当然仲が悪い。私はエルフ達を何とも思わないのだが、あちらは違う。まるで禽獣を見るような目で私を見るのだ。

 他のくじ引きの結果は、うちのリーダーの戦士デュパンはポニーテールの神官戦士のミカさん。パーティーの紅一点、癒しの魔法を得意とする神官のジニーは赤毛の戦士アンジュさん。うちのマスコット的存在の子供族ホップ吟遊詩人バードのパムは魔法使いのルルさんに鍛えて貰う事になった。


「改めてだけど、私の名前はデル。見ての通り野伏レンジャーよ」


 どこが見ての通りなのだろうか。ボタンシャツに七分丈のパンツというそこら辺の女の子みたいな恰好で武器を帯びてない。どこに野伏レンジャーの要素があるのだろうか? けど、全く侮蔑の色が見えない。エルフだと思うのに。


「あなたの名前と職業クラスは?」


「レ、レリーフ。魔法使いだ。それより、私を見てなんとも思わないのか? ダークエルフだが」


「ダークエルフ。そうなの。それがどうしたの? 関係ないわ。ザップ兄様があなた達の事を自分の事より人の事を大事にする馬鹿ばっかだから鍛えて欲しいって言ってたらしいわ。ザップ兄様が私たちに頼み事をする事なんて滅多にない。私たちはそれに応える。それに、種族とかより大事なものは心よ」


 デルさんは自分の薄い胸を親指で指す。そうか、ザパンさんはそんな事言ってたのか。

 私は、デルさんとの訓練に胸を躍らせた。こんな綺麗な人が私を鍛えてくれるのか……

 ザパンさんを失望させないように頑張ろう。


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