姫と筋肉 誕生(3)
「くっはーっ! 良い攻撃だったぞ」
レリーフは小瓶を飲み干す。あれはミドルヒーリングポーション。結構ダメ入ってたぽいな。けど、結構本気で殴ったのに恐ろしい奴だ。これで本人は魔法職の頭脳派と言うから、なんだかなー。
「で、さっきの話はどうなったんだ?」
「さっきの話、ああそうだな、そんなに面白い話ではないぞ」
レリーフはそう言ってるが、多分凄まじい話なんだろう。筋肉がつきにくいって言われているエルフがこんなになっちまってるんだから。
「聞きたい、聞きたーい」
「私も」
「私も」
シャリーちゃん、ピオン、パイ、ケイがレリーフのテーブルに着く。僕もつられるように椅子を持ってきて座る。やっと話が始まるのか。けど、なんかレリーフがデレデレしてるのがムカつく。コイツは筋肉だけじゃなく女の子にも興味あるのか。意外な一面を見た気がする。
そして、レリーフは語り始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あの時、私達のパーティーは、都市を往復する商人の護衛の依頼を受けていた。いつもは我々だけで遂行するのだが、あの時はたまたま荷物持ちをやとったんだ。ザパンという、やたら怪力で目力が強い女性だった。
行きは大した事なかったが、帰りにはワイバーンが現れた。我々は王都に届ける薬が入った荷を護るためにワイバーンに挑み、壊滅した。だが、荷物持ちのザパンに助けられたんだ。不思議な力で傷も治してもらい、ザパンは目立ちたくないからと、我々にワイバーン討伐の手柄を譲った。
そして、報酬を受け取ったあと、ギルドの円卓でザパンが口を開いた。
「デュパン、お前、なんで勝てもしない戦いをしようとしたんだ?」
デュパンとは知ってると思うが我々のリーダーの戦士だ。
「薬をとられたくなかった」
デュパンは即座に答えた。
「薬はなんとかなったかもしれないだろ、見ず知らずの子供のために命を賭けるなんて大馬鹿だ」
ザパンは声を荒げた。いい人だ。会って間もない我々の身を案じて激怒してくれている。
「けど……また同じ状況になったら……私は同じ事をすると……思う」
だが、私はそこは譲れない。私はザパンに気圧されながらもたどたどしく言葉を紡いだ。
「わたしも、目の前に死にかけた人がいたら助ける」
神官戦士のジニーも私と同意見のようだ。
「おいらも、何があってもデュパンを助ける」
お調子者の子供族のパムも同じようだ。私は良い仲間を、誇れる仲間をもったものだ。
「俺は、たくさんの冒険者を見てきたが、お前らのような馬鹿で長生きした奴はいなかった。命を大事にしろよ、じゃ生きてたらまた会おう」
ザパンは苦笑すると立ち上がり去って行った。そんな事言ってるが、あの人も多分同類だろう。助けを求めるものがいたら、間違いなくなり振り構わず手を貸すだろう。それは、我々を助けてくれた事からも伺える。
そして、我々はくつろいで話に花を咲かせながら、一応の依頼達成を祝して、杯を傾けていた。
「お前たちっすね。ザップ兄様が鍛えて欲しいっていったのは」
我々のテーブルにいきなり現れた赤毛の髪の少女。許可も取らずテーブルに着くと相好を崩した。その後ろには3人の少女。みんな可憐で、役者や歌姫と言っても違和感が無い。確か護衛で向かっていた時に絡んできた人達だ。また因縁をふっかけて来たのか?