世界の終わり
「世界の終わり」
私は手にした一輪の薔薇を軽く放り投げる。右の手に発生した万物吸引の白い光の球が薔薇の命を刈り取る。薔薇は急速に萎れ、白い粉となり散り消える。成功だ。別に薔薇で無くてもいい。命あるものならなんでも触媒になる。
『世界の終わり』
世界を変革する禁呪。
吸収系の魔法の至高にして終焉。まさかコレに頼る事になるとは……
ノノの目の前は草原。草原が命を失って色を無くしていく。すまない、こうするしかなかった。
目の前に立つ男。異質過ぎる。人が成長で行き着いたのか、異界の力を取り込んだのか解らない。1つ言える事は、アレを倒せる存在はこの世に居ない。人々はアレを魔王と呼んでいるが、そんな可愛らしい存在じゃない。アレが1つでも『世界』を手にしていたなら、この世界はどうなったか解らない。
アレは様々な破壊をノノに向けて放つが全て『エンド』、白い球に吸いこまれていく。ノノの餌にしかならない。けど、アレは知ってるみたいだ。『エンド』に近づく者には等しく滅びがもたらされる事を。
どれだけの時が流れただろうか、アレは飽きずに餌を撒き散らし続ける。どれだけの力を持ってるのだろうか。アレは下がろうとするが、それは叶わない。『世界』に対抗出来るのは『世界』だけ。『エンド』からは逃げられない。
ノノは十分満腹。いや、貰いすぎて破裂しそう。ここら辺が潮時。アレからはもう大した力は感じない。『エンド』が吸いこんでノノに溜まった全てを左手に集める。黒い球体『初め』。『エンド』を消して『プレ』を放つ。
「原始混沌」
ノノは呪を紡ぐ。声は音、音は呪、呪は力。声は力になる。
アレに向かっていく『プレ』。アレに当たって弾ける『プレ』。目の前のものは全て吹き飛ばされた。ノノの結界も全て吹き飛んだ。アレはもう存在しない。ノノの仕事は終わりだ。よかった転移石が1つ残っていた。ここから歩くのは難儀だ。帰ろう。
「精霊王。すまんが、これも決定だ」
ノノの前にいるのは、長身の美丈夫。黒竜王オブシワンが人化したものだ。
「1つの国が丸々消え去った。確かに魔王を倒せと言ったがやり過ぎたみたいだな。お前より魔王の方が無害だったとの事だ。また、いつの日か会えるといいな」
黒竜王は消え去った。ノノの家の回りに結界を残して。こんな結界、時間をかけないと作れない。そうか、本当の狙いはノノ。力を出し切った所を狙われたのか。結界を壊せるのは『世界の終わり』だけ。行使したら森も死ぬ。森が死んだらノノは生きて行けない。ゆっくり考えよう。
「ノノさーん。牛乳のみます?」
ノノに飲みさしの牛乳を勧めてくる間抜け面のがきんちょ。コレが本当に黒竜王なのかしら? お返しはコイツが本来の姿を取り戻した時にしてやるかしら。ネットリきっちりと……
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