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番外編SS2前編 荷物持ち討伐依頼を受ける


「お願いします。今、手が空いてる強い冒険者がいないのですよ」


 ギルド職員の気の弱そうなお兄さんが僕に頭を下げる。


 僕らは今、町の冒険者ギルドの掲示板を漁っている。マイは喉が渇いたって言って飲み物を買いに行ってる。1人の僕にギルドの職員が話しかけてきた。どうも僕の顔を知ってたみたいだ。


「寒いからいやだ!」


 何で好き好んで冬山に行かなければならないのだ。寒いだけでなく、そんな所に行ったら間違いなく『しもやけ』になる。『しもやけ』は嫌だ。あの収まらない痒み、勘弁して欲しい。


「そうですよね、報酬も雀の涙ですし……」


「どうしたのザップ? なんか依頼?」


 マイが近づいてくる。チッ、タイミング悪いな。


「実はですね……」


 職員はとても卑屈にマイに依頼内容を説明した。もしかしてマイが来るタイミングを計算してたのか?


「ザップー、助けてあげましょうよ、困ってるみたいだし」


「俺の名前はザップーじゃない、ザップだ」


「ザップー最近太ってきたんじゃない? 運動不足よ」


 むむ、マイは聞いちゃいないな。ザップーって伸ばしたらなんか犬とかペットの名前みたいで間抜けな感じになっちまう。まぁ、最近はごろごろしてて何でもほとんどマイにやって貰ってるから、ペットのようなものになってる感は否めないが。

 太ってきた? そうだな、たしかに服がきつくなってきた気も……


「寒いからしょうがないだろ」


「じゃ、ご飯減らすしかないわね、今日からご飯野菜だけね!」


 野菜は嫌いでは無いが、肉無しはきつい。


「うっ、わかった、わかった、行けばいいんだろ……」


 マイが来た時点で依頼を受けるのは、ほぼ確定してたようなものだ。マイはおせっかいすぎる。まあ、そこもいい所なんだけど。

 それから僕たちは詳しい依頼内容を職員から聞いた。とっても職員からは感謝された。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 僕たちは今、雪山の中腹の洞窟前にいる。辺りは雪が積もっていて、さらに音もなく雪が降っている。街からここまで走ってきた。やはり少し痩せないと、マイについて行くのがやっとだった。


 ちなみにドラゴンの化身アンは宿の暖炉の前で毛布にくるまっている。ご飯以外ではそこから頑として動かない。今も多分そうしてるはずだ。


 依頼内容はありふれたゴブリンの一団の討伐。近くの村の家畜が攫われたらしい。旅人の行方不明者がいるから、もしかしたら拉致されてるかもとの事だ。


「なあ、面倒くさいからドラゴンブレスをぶっ込んで蒸し焼きにしてもいいか?」


 僕は今、肘から先くらいしか動かない。完璧な防寒対策のお陰だ。


「駄目よ、誰か捕まってるかもしれないんでしょ!」


 マイは、ショートパンツにシャツと上からマントのようにミノタウロスの腰巻きを纏ったいつもの格好だ。大丈夫なのか? 薄着過ぎるだろ。


「今さらだけど、寒くないのか?」


「いつも言ってるけど、あたしは寒さに強いのよ」


 おいおい、寒さに強いと言っても限度があるだろ。


 あ、そうか、マイは猫耳、獣人だった。


「わかった、マイ、おまえ服の下にいっぱい毛が生えてるから暖かいんだな」


 僕の言葉を聞くや否や、マイの顔が真っ赤に染まる。人間ってこんなに赤くなれるんだな。


「ザップの馬鹿ーっ!」


 気が付くと僕は雪の中に埋もれていた。首が痛い。攻撃されたのだろうけど全く見えなかった。もしかして僕よりマイの方が強いのではないだろうか?

 それに、なんでどつかれたのかわからない。悪い事言ったかな?


「なんか悪い事言ったか?」


 僕はエリクサーをかけながらなんとか立ち上がる。


「ザップ、次、毛深いとか言ったら絶交よ!」


 僕は心の中に今の言葉を刻みこんだ。


 気を取り直して洞窟へと進んだ。


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