巨大バッタ(後編)
巨大樹の森のそばにある草原にバッタはいるだろうとの事だ。巨大バッタが好む餌は巨大雑草なので、人を襲う事は無く、それ故に討伐依頼が出たのは初めてらしい。
今回の討伐方法は、出来るだけバッタを傷付けないために頭の後ろからレイピアで脊髄を一突きで止めをする事にした。僕たちは背丈程の雑草が生い茂った巨大樹の森のそばの草原に着く。マイはでっかい岩の上に座って俯瞰しながら僕らに指示を出し、僕、アン、ノノはレイピア片手に草原に入り込んだ。
「惜しかったわ。ザップ、もうちょっと右だったわ」
草原に来てからもう2時間くらいたったんじゃないだろうか? 僕たちは汗だくになりながら草原を走り回っている。ここにいる巨大バッタは多分1匹。マイの指示のもと、バッタを目指し駆けて行き、ジャンプしたらその着地点目がけて突っ走る。それを延々と繰り広げている。
「アンちゃん、もっと前、前。あーっ惜しかったわね。もう少しよ」
「もう我慢出来ないです。ここら一帯焼け野原にしてもいいですか?」
ドラゴン娘が痺れを切らした。がちだ。止めないと。
「待て、待てアン。止めてくれ、俺らも丸焦げになっちまう。我慢だ今日の飯を心に思い描いて我慢しろ」
飯のお陰かどうにか丸焦げは免れた。
「腐れバッタ。ノノの幻覚にはまってるはずなのに全く効果無いかしら」
それからも僕らは巨大バッタと不毛な追っかけっこを繰り返す。
「ザップ、行ったわよ」
マイの声に振り返り仰ぐと巨大バッタがこっちに向かって飛んで来る。やった、やっとタイミングが合った。縦長の顔だ。
「ショウリョウバッタだな。こんなにでっかいのに名前はショウリョウバッタなんだな」
「ザップ、下らない事言ってないで、なんとかしてよ。日が暮れるわよ」
流石マイ、耳いいな遠いのに。僕は迫り来るバッタの下をくぐり抜けやり過ごす。着地するなり、また跳ねようとするバッタ。僕はその背を目に足に力を入れる。そして跳ぶバッタ。僕もそれを追っかけ跳ぶ。よし、奴の背を取った。レイピアを引き絞る。
キチキチキチキチキチキチ!
なんと、奴は羽根を広げ飛び始めた。けど、悪手だ。今までは奴のジャンプの描く放物線故に上手く攻撃出来なかった。僕は足下にポータルを出して奴を追う。巨体なだけあって飛ぶのは遅い。
「もらった!」
僕はバッタの背に乗り、その首筋にレイピアを突き刺した。落ちていくバッタを収納に入れて着地する。
「やっとくたばったみたいですね。バッタだけに」
アンがつまらない事言いながら駆け寄ってくる。
「流石ザップね」
マイも来るがノノはもう力尽きたみたいで声もしない。
そして僕らはしばらく休憩して、巨大樹の森を後にした。
「依頼主はとってもお喜びで、良かったらザップさん達も一緒に召し上がられないかって言ってますが、どうしますか?」
ギルドの職員から報酬を受け取る。え、まじか、あれ食べるのか?
「その気持ちだけいただいておきますと伝えて下さい」
何が悲しくて、あんなモノ食わにゃならんのだ。罰ゲームか?
そして、僕たちは「みみずくの横ばい亭」で美味しい食事をいただいた。
とっても疲れていたので、バッタンキューだった。いまいちだ……
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