山猿塩
「太古の世界!」
めっちゃくっさいゴミの山の上に裸で僕は立ち、魔力を解放する。僕を中心に光が溢れ、辺りの全てを包み込む。
『太古の世界』
全ての光に触れた無生物を塩に変えてしまうという防御不能の絶対魔法。世界の名を冠する魔法は、世界に変革をもたらすと言う。
光に包まれながら僕は落ちていく。なんでゴミを山にしたんだ? しかもなんで天辺に立ったんだ? こうなるのは目に見えてたはずだ。けど、なんとなくなんか小積んだ山を見ると登りたくなるのは人間の性だ。そうだ、人間、特に男は膨らんだものが大好きなんだ。膨らみは男のロマンだ。足が地につきみるみる埋まっていく。止まれ、ここで止まってくれ。デリケートな所に塩を塗り込まれるのは勘弁だ。
光が収まり、辺りは白一面。風が吹き、塩を巻き上げる。綺麗だ。とても綺麗だ。さっきまでの悪臭もきれいさっぱり無くなっている。まずは収納からパンツを出し穿く。塩の白い小山の天辺にパンツ一丁で腿まで刺さっている僕。人が見ると夢の中だと勘違いする程シュールだろう。けど、ここは荒野で人払いをしている。まあ、好んで僕の裸を見たいという物好きは居ないだろう。
日差しが温かいと言うか暑い。いかん、急がないと汗をかいたら塩が体に貼り付く。辺りの塩を全て収納に入れスタッとすり状の大穴に立つ。
あとは収納に入れた塩を商品化して魔道都市にいる導師ジブルが売っ払ってくれるはずだ。僕は服を着て穴から出て帰途につく。
王都で最近問題になっているゴミ処理について、王国から直々に僕に依頼が来た。僕の収納を使ってゴミを人が来ない山に捨てて来てほしいとのものだった。王都近郊にゴミ収集所があるのだが、昨今の人口増加で処理が追いついて居ないとの事だ。
当然その依頼を受けたけど、山に捨てるはいただけない。僕はそのゴミを引き取る事にした。そして収納いっぱいのゴミを荒野で処分したという次第だ。環境にも優しく小銭も貰えて一石二鳥だ。
「ザップ、もう塩売れたからまた作ってくれない?」
リビングでモーニングコーヒーを愉しんでいる僕に導師ジブルが話しかけてきた。え、嘘だろ。まだ1週間も経ってないぞ?
これはおかしい。なんかあるな。僕は魔道都市に向かって駆け出した。
聞き込みをすると、直ぐにわかった。魔道士ギルドが大々的に広告を打って塩を売り出しているそうだ。しかも会う人会う人僕を見て笑いをこらえている。
魔道士ギルドには長蛇の列。それはみんな塩を求めている人々だ。
地獄だ……
魔道士ギルドの壁に貼られたスクリーンにメッチャでっかく僕が映し出されている。塩を作っている時の画像だ。光が溢れ裸で塩山に立つ僕。ゴミは移ってなく、流石に僕の大事な部分はハンマーの絵で隠してある。塩山の上でパンツ一丁でドヤ顔を晒している僕。どうやって撮影したんだ? 複数の強力な存在が関与してるな。恥ずい。穴があったら入りたいってこういう気分なんだな……
『猿人間印の山猿塩。なんと2キロで銅貨1枚。早い者勝ちよ!』
最後に流れるナレーション。あ、マイの声だな。覚えとけよ!
「あっ、ザップだ!」
「「ザップ、ザップ、ザップ」」
「「ばんじん、ばーんじん、ばーんじん」」
ザップコールと蛮人コールが辺りを埋め尽くす。
僕は軽く手を振り逃げ出した。こりゃ魔道都市では変装必需だな。
このうらみはらさでおくべきか……
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