虹の妖精(前編)
「ザップ、見て、虹よ虹」
マイの言葉に空を眺めると虹、綺麗なアーチ型ではっきりとした虹だ。
「綺麗だな。虹って確か光の反射とかで出来てるんだよな?」
「そうよ、空気の中の水の粒を通った光が屈曲して出来ているのよ。ザップにしてはよくものを知ってるかしら。あと、大いなる存在との契約が成就した時も現れるとも言うし、虹の麓には宝箱があるって話もあるわ」
僕に答えてくれたのはノノ。一言余計だけど、なんも言えない。奴は頭の中は残念だけど、見てくれは超絶美少女だ。見ると若干竦んでしまう。正直おでぶだった頃の方が扱いやすかった。
「虹ですか。美味しそうには見えないですね。なんか食べたら毒ありそうです」
ブレないドラゴン娘。ネタなのか?
「アンちゃん、虹は食べられないのよ。けど、そう言えば虹色の食べ物って思いつかないわね」
「マイ姉様。どうぞ」
アンの手には虹色の小さな粒。飴玉なのか? 収納から直接出したのだと思うけど、出来ればなんか容器に入れてほしい。収納の中がベタつきそうだ。
「ありがとう、アメちゃんね。食べられる虹ね」
マイは躊躇いなくそれを口にする。アンはノノにもあげて僕にもくれる。口に含むと甘い。
「ご主人様、美味しい虹でしょ」
「そうだな。虹って甘いんだな」
ちなみに僕たちは冒険の帰り道。今日のパーティーは僕、マイ、アン、ノノ。メッチャバランスが悪い。大雑把な職種で考えると、戦士、戦士、戦士、魔法使い。しかも魔法使いは歪んだバフ専門だ。結果から言うと僕は今回も全裸になった。僕はもうノノをどっかに捨ててきたいのだけど、今のノノはマイのおきになのでそれが出来なくて困っている。
王都のそばに隠してある魔王リナのワープポータルを通って僕たちの住んでる街のそばのポータルに出ると、大地が湿っていて一雨ふったみたいだ。僕たちが住んでる街は王都からかなり北にあるので、移動すると天候が違う事は多々ある。けど、毎回びっくりしてしまう。
街道を歩きながら虹を眺める。まだ消えないな。
「ノノ、そう言えば、虹にも精霊っているのか?」
「居るわよ、あんまり役には立たないから呼ぶ事は滅多にないけど」
「えー、見たい見たい。どんな姿なの?」
「ノノが呼んだのはかなり昔だから、どんな姿か解らないかしら。精霊は自然そのもので、その姿は人々が望んだ形になるから呼ばないと解らないわ」
「そうなのね。じゃ、ノノ、呼んでみてよ」
「待て待て、虹の精霊って無害なのか? また俺が脱がされたりしないのか?」
「ザップ、何言ってるのかしら? それはフリ? また脱ぎたいのかしら?」
「フリじゃないわ。で、安全なのか?」
「ノノがコントロールするから、安全に決まってるのかしら」
「いいでしょ、ザップ。あたし、虹の精霊、見てみたい」
「しょうが無いな。ノノ頼む」
「何勘違いしてるのかしら。ノノはマイのお願いだったらなんでも聞くわ。ザップの意思なんて関係ないかしら」
「クッ」
生意気な奴だ。ノノを睨むけど、目を逸らしてしまう。ヤバい可愛い。反則だろ……