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 妖精の国の魔物


「ザップ、ザップ、ザップー、今すぐ来て来てーっ! 魔物、魔物がでたのよーっ!」


 朝起きて身を起こし、しばらくぼーっとしてたら、扉がバタンと開き、目の前に手のひらサイズの蝶のような羽がついた生き物、妖精のミネアが現れた。なんか久々な気がするな。最近は導師ジブル、廃エルフノノなどの魔法職の仲間が増えたので、妖精は影が薄くなりつつある。まあ、コイツが来ると言う事はロクでもない事だろう。


「いやだ! 俺は二度寝の贅沢を味わう所だ」


 僕はまた布団に潜り込む。コイツと絡むくらいなら寝てたがマシだ。


「何言ってるのよ、このトンチキ! 寝たいならアタシの魔法であとで好きなだけ寝かせつけてあげるから、今は来るのよ時間ないんだから!」


 ミネアは小っちゃい体で、僕の布団をガバッと取っ払った。


「お前、その体でどうやって布団剥いだんだ? おかしいだろ」


 ん、そう言えば前にもこんな事あったような。確か魔法だったよな?


「それはー、アンタには見えないと思うけど、見えなくして気配を殺しているピオンに布団剥いで貰ったのよ」


「なんだ? ここにピオンがいるのか? 訳が解らんな。なんでそんな事してるんだ?」


「そりゃ、ザップ、アンタをビックリさせるために決まってるでしょ。それにそれ以外の理由もあるのよ」


「じゃ、ピオンに頼めばいいだろ。じゃお休み」


 僕は布団を取ってもうひと眠りすることにする。


「ちょっと、あんた寝るんじゃないわよ。あたし、今大変なんだからーっ!」


 うるさい奴だな。こいつがそばにいたら、もう眠れなさそうだ。


「おいおい、お前には相方のラパンが居るだろ。アイツに頼めよ」


「ラパンは王都に冒険に行ってるわ。また熊みたいな奴と遊んでるんじゃないの? またアタシに隠れて出てこうとしたから『不幸アンラック』の魔法かけといたけど」


 まあ、ラパンの考えも解らんでない。こんなかしましい妖精を引き連れてたら、どこでも注目の的だ。


「なんだその『不幸』の魔法って?」


「命に別状が無い程度の不幸が降りかかる魔法よ。会いたくない人に会ったり、蝿がやたら寄って来たり、靴下に穴が空いたり。そうね、ついて来ないなら、アンタもアタシの大魔法を味わってみるかしら?」


 なんか地味に嫌だな。ラパン、大丈夫なのか? なんか脅されてるみたいで釈然としないが、しょうが無いな。


「解った、解った。それは遠慮しとくよ。それでどこに行けばいいんだ?」


「妖精の国よ、今からいくわよ」


「待て、待った!」


 僕の静止関係なく、辺りの景色が変わる。なんとか間に合った。僕は服を収納に入れミノタウロスの腰巻きを腰巻きとマントにして全裸を免れた。確か妖精の国は天然のものしか存在できないはず。

 僕と妖精は美しい木々に囲まれた森にいる。前来た時にはたくさんの妖精にディスられまくった記憶があるが、今回は居ない。


「ここは、何処だ?」


「妖精の国の外れよ。魔物がそばにいるから、みんな避難してるわ。アタシの素晴らしい作戦を言うわよ。ザップが魔物を引きつける。ピオンが止めを刺す。以上」


「え、ピオンもいるのか?」


「ザップの後ろに私はいる」


「えっ?」


 振り返るが誰も居ない。なんかそういう怪談あったな。少し鳥肌たっちまった。


「アタシの魔法とピオンの隠形が組み合わさったらマジ無敵。どんな生き物も暗殺出来るわよ」


「なら、いらんだろ俺」


 と言う事は、僕の近くに裸のピオンがいるのか? なんか少しドキドキだ。


「それが、さっきアタシとピオンで試してみたけど、やっぱ武器無しだと思うようにいかないのよね」


「じゃ、俺がやっつけたらいいだろ」


「駄目駄目駄目っ! アンタが本気出したらグチャグチャのグチャで美味しく食べられなくなっちゃうでしょ!」


 なんてわがままな。ていうか、コイツ魔物を食う気なのか。


「で、なんの魔物なんだ?」


「デビルベアの特殊個体よ。結界から入ってきて日が経ってるから。妖精の森の清浄なものしかここしばらく食べてないはずだから、そりゃ。ほっぺが落ちる程美味しいはずよ」


 ん、緊急なんじゃないのか? しばらく熊を養殖してたのか? これって本当に僕は不要だったんじゃ?


「ザップ、奴が来た。足止め頼む」


 ピオンの声がしたと思ったら、目の前に木々をゆらしながらでっかい熊が猛ダッシュで近づいて来た。


「ザップ、肉が美味しく無くなるから攻撃禁止よ」


「なんじゃそりゃ」


 妖精は後ろに飛んでいく。


 僕は立ち上がった熊と対峙する。もう、訳がわからん。何してんだ僕……


 熊が右手を振り上げ僕に振り下ろす。その手を受け止める。中々の力だ。面白い。


 ザシュッ!


 え、熊の頭が消えた。熊の首から噴き出る血を避ける。


「何やってるのザップ! 血抜き血抜き!」


 妖精に急かされるまま、熊の足をもって木の枝に跳び乗り熊を逆さまにして血抜きする。そして、僕の下で見えない何かが熊をどんどん解体していき、しばらくすると肉と毛皮に綺麗に分けられた。これは軽くホラーだ。


「ピオン、何使って切ったんだ?」


「手刀」


「……嘘だろ? 手で切れるわけねーだろ。」


「いや、切れる。忍者だから」


 うお、忍者すげー。んな訳。なんかのスキルだと思うけど。ピオンは敵に回したくないな。


「ありがとう、ザップ、ピオン。残った肉後であげるから、先に待ってて。宴会、宴会」


 その言葉のあと、僕は自分の部屋に戻っていた。


「ザップ、お疲れ」


 見ると、ベッドの縁に座っているピオン。僕のシーツを纏っていて、シーツには所々血がついている。いかん、シーツは薄いのでとても扇情的だ。なんか訳がわからなかったけど、これがご褒美なのか?


「おい、服着ろよ」


「やだ、汚れる。お風呂に入ったあと」


 いかん、なんかピオンが可愛くみえる。


 コンコンッ!


 ゲッノックの音。


「ザップー、起きたの?」


 ゲッ、マイだ。どうしよう。どうやってこの場を切り抜けよう……


 やっぱり、妖精と関わったらロクな事ないわ……


 

読んでいただきありがとうございます。


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