姫と筋肉 壁ドン
スミマセン。朝から会議で時間が無かったです。徐々にアップします。
「え、『誰も居ないのに壁を叩く音がして眠れません。誰か解決して下さい』。んー、これってオカルト案件っぽいな。肝試しかよ。けど、もうすぐ夏だしな」
何故か知らないけど、オカルト系の話は夏に多い。まあ、もっとも僕のメンタルは霊的なものに対しては無敵だけど。何故なら、僕の出身の魔道都市は魔道の聖地。存在自体がオカルトだ。
僕がギルドの掲示板の貼り紙を取ろうとすると、でっかい黒い手が伸びてきて、その紙を先に取られた。
「おい、それ、僕が先に目をつけてたんだが」
振り返ると巨人。黒い肌に銀色の髪。それから突き出た長い耳。げっ、レリーフだ。
「すまんな、それならお前に譲ろう。それにしてもよく会うな」
「そうだね。その依頼、レリーフにぴったりだど思うよ。僕は遠慮するから、頑張ってね」
「お前が、先に見つけたんだろ?」
「うん、だけど、なんかオカルトみたいだから、僕には荷が重そうだよ」
「しょうが無いな。私が力を貸してやろう」
「いいって、そりゃ悪いよ」
「気にするな。お前には借りがあるしな。遠慮するな」
相変わらず、鈍い奴だな。
「しつこいわ。お前と一緒にいたくないんだよ!」
「そうか……なら仕方ないな」
レリーフは肩を竦ませ、背を向ける。あ、言い過ぎたかな。
「悪かったよ、もし暇だったら手伝ってくれないか?」
むぅ、我ながら気が弱いと思う。けど、レリーフは悪いヤツじゃないしな。
「そうか、それなら私で良ければ力になろう」
そう言うと、レリーフは嬉しそうに大胸筋を波打たせた。
僕の名前はラパン・グロー。最近はレリーフとコンビを組んでると思われている冒険者だ。まるで、仕組まれたかのように、1人で王都に来るとレリーフに遭遇する。もしかしたら行動範囲がカブってるのか?
僕たちは依頼の場所に向かう。いかん、つい勢いでお金にならない依頼を受けちまった。僕たちが着いたのは瀟洒な住宅街で幾つもの分譲マンションが立ち並んでいる。依頼人の家もその1つで、会って内容を確認すると、夜になると。隣の部屋から壁を叩く音がするそうだ。隣の住民は少し前にその部屋で自殺したそうで、その悪霊の仕業と依頼人は思っている。依頼人は僕らに後を任せ部屋から出て行った。そして夜まで僕らはそれが起こるまで待つ事にした。管理人さんに鍵を借りて隣の部屋をのぞいて見るが、そこは何も無く壁紙を貼り替えている途中だった。レリーフ言うには今は霊的なものは居ないそうだ。また依頼人の部屋にもどる。
「ケイト、スザンナ、ケイト、スザンナ、ふっしゅー」
相変わらず、レリーフは腕立て伏せしながら大胸筋の名前を連呼する。そしてくたびれるたびに、ヒールポーションを飲みまくる。それを延々と繰り返しやがる。ここは地獄なのか? なんの拷問なのか? 早く壁ドン無いかな……
そうこうして12時間、腕立て伏せから始まって、腹筋、背筋、スクワットをエンドレスに見せつけられた。ご飯も挟んでまた筋トレ。地獄だ。絶対コイツ彼女出来ねーな。常人にコレは耐えられない。
「ドンッ!」
やった来たコレ。壁ドン、キタキターッ!
「行くぞレリーフ!」
僕たちは駆け出し隣の部屋に行くと、床には魔法陣、そして、目の前にはレリーフより一回りは大きな魔族らしい存在が。入った時に気が付いたけど、部屋には強力な耐魔族用の結界が張ってある。魔法陣は時限式、いつもは存在しないけど、ある時間が来ると顕現するやつだ。悪魔召喚魔法陣、しかもブーストしまくってあり、呼ばれている存在はかなり高位な存在だと思われる。雄山羊の頭と下半身に人間の胴と腕を有している。多分アイツが結界を壊そうとして壁を叩いていたのだろう。と言う事はここの住民は自殺ではなく魔族に自らを生け贄に捧げたのか? やっぱ都会は恐ろしいな。こんな住宅地で悪魔召喚する奴がいるなんて。それよりもコレはまずい。見た所アイツは完全にアストラル体だ。物理に対して無敵とも言える存在だ。僕のレパートリーにはアイツにダメを通す手段が無い。まあ、あっちの攻撃も僕には通じないとは思うが。けど、どうする?
「でっかい悪霊だな」
スタスタと魔族に近づくレリーフ。
「止めとけ、そいつは多分グレーターデーモン!」
「何言ってる。こんなの只の悪霊だろ」
「ぐぼはおっ!」
魔族の口から悲鳴が漏れる。嘘だろ? レリーフ、アストラル体を直に掴んでやがる。レリーフは片手で魔族の頭を締め付けると、魔法陣へ引きずっていき、強引に押し込んだ。魔法陣はひときわ瞬き消え失せた。嘘だろ?
「え、何したんだ?」
「悪霊退治だ。私は死霊術士だからな」
どこでレリーフは死霊魔術を使ったのだろうか? 完全非常識な物理だろ……
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。