番外編SS 荷物持ち珈琲を飲みくつろぐ
「雪か……」
空から、ひらひらと雪が舞い落ちてくる。
今僕は丸々と服を着込み完全な防寒対策をとって、カフェのテラスで珈琲を飲んでいる。うん、とても優雅だ。
僕達は旅の途中で立ち寄った規模の大きめな商業都市で、寒さが和らぐまでゆっくりする事にした。色々収納にある使わないものを売ったら結構な金額になったので、しばらくは働かなくても食べていける。
僕とマイは大丈夫なのだが、ドラゴンの化身のアンは滅法寒さに弱い。それでここら辺で冬ごもりする事にした。
マイとアンの2人は今、服とか色々お店で購入している所だ。
僕は『ゴールデン・ウィンド』の荷物持ちをしてたときに、女性の買い物の激しさと不条理さを体験してたので、同行を辞退してカフェで優雅なひとときを過ごしている。
けど軽率だったかもしれない、ひどく寒い。当然この寒い中テラスにいるのは僕だけだ。通り過ぎる人々の目が珍奇なものを見るもののような気がする。僕は自意識過剰なのだろうか?
ここで待ってるといった手前、店の中に入るのははばかられる。訳はわからないけど、それはなんか負けたような気がする。
ちらほら舞う雪が綺麗だと思えていたのは最初のうちだけだった。
まる出しの手がじんじんしてきたので、脇に挟む。いままで、服に無駄についていると思っていた、ポケットというものの重要さを痛感した。
お尻の方からじわじわと寒さが這い上がってくる。冷たい。いったい僕は何をしているのだろうか?
店内に逃げ込むか?
いや、それはない!
僕は『最強の荷物持ち』だ!
寒さ程度には屈しない!
少しずつ雪は激しさを増してくる。風も強くなる。これって吹雪って言うのでは?
上を見ると、カフェのパラソルに微かに雪が積もり始めている。横殴りの風が僕の肩にも雪を散らす。
寒さで少しずつ頭も痛くなってくる。
まだ、買い物は終わらないのか?
僕は何をしているのだろうか?
けど、男は一度決めた約束は守るものだ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ザップ!何してるの?」
「ご主人様、雪、積もってますよ……」
二人が来たときには日は既に沈んでいた。僕はなんとか生き残る事ができた。
買い物長過ぎだろ!
次からはついていこう……
「荷物多いな、収納に入れるぞ」
僕はかじかんで感覚のなくなりかけた手で雪を払い、二人が両手にぎっしりと抱えた荷物を収納にしまう。
「ありがとう、ザップ! さすが荷物持ちね」
マイは猫耳をピコピコして笑う。寒くないのか、彼女は結構薄着だ。
「ありがとうございます、ご主人様」
アンも微笑むと頭を下げる。マイと逆に着込み過ぎだろ、まん丸としてる。遠目にはもはや誰だか解らない。
「なぁ、今度、温泉にでも行くか、暖かいらしいからな」
もはや僕の頭の中には暖かいものしか思い浮かばない。
「いいわねー」
「それいいですね」
僕たちは、宿屋に向かって歩き始めた。
ここからしばらく単話か、複数話の回が約70話進みます。番外編って銘打ってますけど、その後続く第二部にもキャラ引っ張ってたりもします。何話で誰々出てきましたよ的な事をあとがきに足していこうと思います。
ぜひよかったら、しばらくの間、肩の力を抜いてザップさん達とお付き合いいただけたら重畳です。
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とってもとってもモチベアップに繋がりますのでよろしくお願いします。
2024.2.13
少しづつ→少しずつ、なんですね。ワード先生に旧仮名遣いって教えて貰いました^_^;