幸運のネックレス(後編)
「ミカ、お前、パーティーを抜けるって言ってるんだってな。どうやって生活していく気だ?」
いかん、押さえていても怒気をはらんでしまう。
「はい、私は『世界平和会』のネックレスを売って生活しようと思ってます」
「という事は商売だな。お前、それで、そのネックレスを売るのに使った時間と手に入れた金額を正確に言ってみろ。会合とか勉強会とかそんなのもあったらその時間もすべて時間に入れろ」
しばらくミカはごにょごにょいいながら、計算していく。マイが紙とペンをミカに渡す。そして、出た時間は約250時間。それで稼いだ金額はざっくりと小金貨10枚。ミカの浮かれた顔が真顔に変わる。
「という事はお前は仕事で1時間で約銅貨4枚稼いだ訳だ。ゴブリン狩りに換算すると2時間で1匹も倒せなかった事になる。今は知り合いとかに売ってるからなんとか売れてるが、それにも限りがあるだろ。調子よく売れてのこの金額だ。お前はこれで生活出来るのか?」
「なんとか、贅沢しなくて、他で働いたら生活出来ると思う。それに『世界平和会』の活動は、みんなが幸せになるためにやってる事だから」
「ああ、解った。それならば、商売にするな。お前が稼いで寄付すればいい。福祉事業で儲けようとするな。それに、お前、まだネックレスの在庫もってるだろ。幾つあるんだ?」
「約1000個……」
「という事は、お前が仕事にしようとしてる事は全く儲けてないじゃないか。むしろ大赤字だ。お前、その1000個を何年かかって売る積もりだ?」
「……」
ミカは何も答えない。
「おら、行くぞ」
僕は立ち上がり、ミカの手を引っ張る。そして、そのまま彼女の本拠地の迷宮都市に向かい、『世界平和会』の本拠地に乗り込んだ。
「ですから、返品はできないんですって」
会議室のような所で、なんとか長と呼ばれてた奴と押し問答している。窓がなく、入口は1つ。逃がさないって事か。面白い事に奴らは僕を勧誘しようとしてきやがって、断ってたらどんどん役職が上っぽい奴が出てくる。今は僕たちを10人くらいの人数が囲み、僕の隣ではミカがその小さい体を縮こませている。その中には明らかに堅気じゃない奴も混じっている。愉快な事だ。光主様って奴の顔も拝みたかったが、なんか面倒くさくなってきた。
「兄さん、返品は出来ねーんだよ。あんまりしつこいと良くない事が起こるかもしれねーぜ」
帯剣している傭兵崩れのような奴がそれをひけらかす。
「良くない事ってなんだ?」
馬鹿が。こっちが丸腰だと思ってボロ出しやがったな。
「こういう事だよ!」
ゴスッ!
傭兵崩れはありがたい事に僕を殴りつけてきた。頬に拳が刺さるが当然ノーダメだ。
「なんかしたのか? 良くない事が起こったのはお前の方だな」
傭兵崩れは腫れた手を押さえる。
「くそっ、魔道士かっ。者共であえっ」
屈強な男共がわらわらとなだれ込んでくる。
「ミカ、解っただろ。『世界平和会』がとっても平和を愛しているって事を」
ミカは無言でうなずく。目から涙がこぼれそうだ。
「それでは、今すぐ返金してもらおうか」
立ち上がって、威圧するだけで、ミカ以外の奴は全員腰砕ける。
「我が名は猿人間魔王ザップ・グッドフェロー。良くない事が起きる前に我が言葉に従った方が賢いと思うぞ」
それから平和に交渉は進み、ネックレスを返金して貰った。
「うう、グスン」
僕の背中でまだミカがぐずっている。ずっと泣いてばかりで埒が明かないので、背中を差し出した。
今回のシナリオを考えたのは導師ジブルだけど、あんまり楽しくない役回りなので僕が引き受けた。ミカのヘイトを受けるかもしれなかったからな。
「私、馬鹿でごめんなさい」
「ああ、そうだ。馬鹿だ。けど、俺も馬鹿だ。気にするな。とりあえず、仲間には謝っとけそれでいいだろ」
「うん……」
それ以上なんて言ったらいいか僕には解らない。ミカを家まで送って、僕も帰った。しばらく後『世界平和会』は消滅したらしい。
エッセイ書きました。
題名は『スー○ードライはセ○ンイレブンで買って飲もう(ビールには適温があると思うのですが、セ○ンの缶もってたら手が痛くなるくらいの温度がスーパー○ライには最適だと私は思いました。)』
お酒のお話です。お話の方は伏せ字無しです。中傷的な事は入って無いので問題は無いと思われます。
それと、なんと、レビューいただきました。感無量です。
気になりましたら下のリンクから行ってみて下さい。
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