古竜たちの戦い
「オブ、お前、暇だろ。私に私の仲間だった古竜について教えろ」
アンがオブに話しかける。オブはフラフラと外をうろついてる事が多いのだが、今日は雨のせいか、リビングのソファで本を手にしている。マイは買い物、ジブルとノノは魔道都市でお仕事だ。
「アイローンボー、それが人にものを頼む態度ですか?」
オブは本から目を離さない。少しは痩せてきてぽっちゃりからふくよかになりつつある。相変わらず目つきは悪く、色黒だ。
「ほう、そうか。古竜のルールにのっとった方法がいいのか? 私はお前より強い。お前はそんなに痛いのが好きなのか?」
「いいでしょう。受けてたちましょう。確かに戦闘能力では、僕の方が劣りますが、僕の権能は魔法必中。お前の投擲必中なぞというカスのような能力とは格が違う。表に出ろ。クソヤロー」
パタンと本を閉じ、オブは立ち上がり、アンにガンをたれる。
「いいだろう。受けてたってやる」
アンは背を向けてリビングの扉に向かう。
「幻人舞踏」
オブが人差し指を立てると、そこに銀色の粒子が集まった小さなリングが現れて、アンに向かって飛んでいってその頭に吸いこまれていく。アンは何事も無かったかのように部屋を出ていく。そしてオブはまた本を開いて読み始めた。
「おい、お前、何したんだ?」
「え、魔法ですよ、魔法」
「で、何の魔法なんだ?」
「そうですね。今頃アイローンボーは、幻の僕と外でダンスしてるはずです。終わらないダンスをね。僕は平和主義なんですよ。無駄な争いはしないに限る。戦わずして勝つ。それが1番ですよ」
なかなか恐ろしい奴だな。いよいよ僕も何らかの魔法に対する策を用意しないとな。僕もアンみたいに簡単に魔法にやられそうだ。
「すげぇな。精神系の魔法ってやられたらどうしたらいいんだ?」
「簡単ですよ。基本的に幻覚系の魔法は、対象者の想像によって作られます。現実と自分の想像の違いを認識してそれを信じれば幻覚なんてただ見えているだけです。術が解けるまで放置してても問題ないですよ。もっともアイローンボーにはそれは難しいと思いますがね」
なんか、訳が解ったような解らないような……
僕はアンの様子を見に行く。アンの声が外からしている。
「なんだ、お前、お前には私の攻撃がきかないのか?」
アンが虚空に向かって突きや蹴りを放っている。おいおい、オブにお前の反則のような攻撃が効かない訳ないだろ。
「さすが、お前も古竜の一角。だがこれはどうだ!」
アンは後方に跳ぶと、口を尖らせて炎を吐く。ちゃんと辺りに引火しないようにしている。気が付くと、遠巻きにチラホラとギャラリーも集まり始めている。それを意識してかアンの動きのキレがよくなる。なんかアンは楽しそうだな。
「おい、回りに被害は出すなよ」
「承知いたしました。オブに私との格の違いを思い知らせてやります!」
アンは後で格の違いを思い知らされる事になるだろう。まあ、いい運動になるだろうからいっか。放置だな。僕はアンに手を振り家に戻る。アンも戦いながらも僕に手を振り返してくれた。やれやれだ。
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