グラウンドバトル
「今日はグラウンド、俗に言う寝技の訓練を行いたいと思います」
エルフの麗人デルはそう言うと僕らの顔を見渡す。大丈夫だ。顔には出てないはずだ。寝技と聞いて顔が歪みかけた。だってしょうがないじゃない。寝技、寝技だよ。マイやデルと近距離で組んず解れつ。そりゃいろんな所に事故で触れちゃうかも、いや触れる事間違い無しだ。けど、修行の事故だ。決してやましい気持ちは無い。いつも技の実験台になり続け、最近は少し痛みに対する耐性もついてきた気もする。その苦行へのご褒美を少し貰ってもバチは当たらないはずだ。
今日はデル先生の格闘技講座。メンバーはいつメン。僕とマイとドラゴン娘アン、マッスル変態黒エルフレリーフと、その小さな体に溢れんばかりのスケベ心を宿した子供族のパムだ。
「これまで寝技についてあまり触れてこなかった理由は、まずは、私たちが憧れていた大会では、大地に足の裏以外が触れたら負けというスタイルだったから必要なかったからです」
あ、それって森人角力の事だな。デルが女の子なのにまわし一つで出場したという。寝技に舞い上がっている僕の頭の中で、まわし一つで角力を取るマイとデルの姿が思い浮かぶ。パラダイスだ。いつか実現しないかな。その夢のバトル。
「ですが、実生活においては寝技は重要な位置をしめます」
どういう人生送ってたら、実生活で寝技使うんだよ。もしかして夜の営みの事か? あんな顔してデルってもしかして……
「投げてもまだ息があるオーガをしめ落としたり、丸焼き用にオークを傷ひとつ無い状態で倒したり、寝技が有用になる局面は多々あります」
やっぱデルはデルだ。色っぽい話じゃなくて相変わらずのバトルジャンキー、ウォーモンガーだ。実生活で寝技役立ててる奴はいねーよ。わざわざオーガに素手で止めを刺すのはお前だけだよ。オークの丸焼きなんか誰が食べるんだ気持ち悪いわ。ツッコみ所満載だけど、ツッコんでデル先生の気分を害したら、後で練習と言う名の拷問が激しくなりそうなので控える。それとなく後のメンバーを見ると、みんな納得して頷いたりしている。駄目だ。みんな脳筋すぎる。
「と言う訳で、始めましょうか。ザップさんお願いします」
ワクワクしながら前にでる。デルの言うままに、大地に腹ばいになったデルの背中にまたがる。僕のお尻の下には折れそうなほどに細いデルの腰。じんわりと暖かさが伝わってくる。いかん、これは訓練だ。訓練。
「それでは好きにしていいですよ」
好きにしていい!
いかん、なんて甘美な言葉。そうだな。とりあえず首でも絞めとくか。僕は後ろからデルに抱きつき首に手を回しスリーパーホールドに持ち込む。密着した後ろからのがっちりスリーパー。これは絶対に逃げられないだろう。
「ギブアップか?」
僕は問う。デルはその細い指で僕の腕を振りほどこうとするが無駄無駄だっ。やっべー、デルの頭なんかいい匂いするし。
「ふごっ!」
なんかお尻に激痛がッ! お尻になんかが突き刺さった。まじかっ、本当に女子の所業なのか? デルの頭が僕の手からスルリと抜けたと思った瞬間、僕の頭は下からかちあげられ、喉に何かと思った時には首に手が回され抱き締めらる。後頭部に柔らかいもの。寝技サイコーと思った時には辺りが真っ白に染まっていった。
「ザップさん起きて下さい。もう大丈夫ですね」
目の前にはデルの顔。反射的に逃げて身を起こす。ゲッ、落とされたのか?
「まずは、締めたら即落とす。そうしないと反撃をくらいます。ゼロ距離で逃げられない時でも相手の急所に一撃入れて力が抜けた瞬間を狙うとなんとかなるものです」
デルが差し出した手を少し怯みながら取り立ち上がる。なんだかな。何の躊躇いもなく人のお尻に指突っ込むコイツのメンタルはサイコパス以上だ。怖え……
「では、練習続けましょうか」
デルとマイ、アンとパムが組になる。
「よろしくお願いします」
僕に頭を下げる筋肉ダルマ。やっぱりこうなるのね。ええとこなしや……
すこし暴走しすぎたのか、ポイントも『いいね』も少ないです(T_T)
けど、これは実話に基づいてます。昔、総合格闘技の人とバーリーテュードの乱取りしてた時に、グラウンドでスリーパーに持ってかれて、プロレスの藤○組長の言葉を思い出し、私も同様の方法でチョークを逃げて返り討ちにしてやりました。
読んでいただきありがとうございます。
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