始めての仲間
『いいね』がとっても多い『第四十話 荷物持ち理不尽を感じる』のマイサイドです。本当に思っている事って言葉じゃなくてやった行動でしか解らないのではと、私は感じています。
「なんか、3人だけって言うのも珍しいな」
ザップが本を見ながら口を開く。今、リビングにいるのは、あたしとザップとアンちゃんだけだ。他の3人は外出している。そうね、最近はだいたい他に誰かいる事が多いわね。
あたしの名前はマイ。このパーティーの出納と家事全般をこなしている。最近はノノちゃんやオブ君が手伝ってくれるけど。
あたしの仲間は生活能力が低すぎる。ザップはどこででも生きていけるとは思うけど、ザップに合わせたらかなり文化水準が低くなるから、それを普通の水準に押し上げないと。
「そうですね。いつの間にか仲間が増えましたけど、始めは私たちだけだったですね」
そうよね、最初は3人だったわね。あの時はザップの鈍感さと頑固さには困ったわね。あたしは、あたしたちがザップの仲間になった時の事を思い出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お前達、なにしてるんだ? 地上に戻ったんじゃなかったのか?」
迷宮の中でスープを飲んで座っている、あたしとアイちゃんにザップは怪訝そうな目を向ける。そうそう、昔はアンちゃんの事をアイちゃんって呼んでたわね。紛らわしいって事で愛称を変えたのよね。
「ザップ、好きにしろっていったわよね、あたしたちは好きにしてるのよ!」
「はい、好きにさせていただいてます!」
ザップって本当に鈍感。なんで解らないの?
「どういう事だ?」
やっぱり口にしないと解らないのね……
「えー、まだ解らないの? あたしたちもザップと一緒に強くなりたいって事よ!」
「そうです、ご主人様と一緒にいたいのです!」
「なんでだ? 俺と一緒にいても何一ついいことないぞ!」
「ザップ、あたしはあなたといて良い事しかないわ! あなたと会えなかったら、もう死んでたと思うし、そうじゃなかったとしても、ただの荷物持ちで何の力も無かったと思うわ」
「ご主人様、私もそうですよ、ご主人様に会わなかったら未だに動物のままかそうじゃなかったら誰かに討伐されてるか餓死してますよ!」
「何を言ってる? 僕は何もしてない。マイと出会ったのだってたまたまだし、アイを助けたのだって自分のためだ。それに僕は何も出来ないし、パーティーに捨てられたような役立たずだ! それに一緒にいたとしても、辛くて危険な事しかないぞ!」
あれ、ザップの一人称が、『俺』から『僕』に変わっている。もしかして、ザップって心の中では自分の事『僕』って呼んでるの? それで強がりで『俺』って言ってるのかも。と言うことは、今のが本音、ザップの本当の気持ち? 何て言うか、少し可哀相。あたしもだけど、あのザップでさえも自信無いんだ……
「そうね……」
あたしはザップ目をじっと見る。その目は澄んでるけど、弱々しい。
「ザップは格好わるいし、気持ち悪いし、汚いし、臭いし、パンツはいてないし、乱暴だし、がさつだし、鈍感だし、言ってる事訳わかんないし、思いつくだけでも全くいい所ないわ! 一緒にいてもいいこと無いかもしれないし、下手したら死んでしまうかもしれないわ!」
あたしは、ザップに感じている事を吐き出す。よく考えるとザップっていいとこあんまりない。けど……
「そうだ、その通りだ……スープありがとう」
ザップは悲しく笑うと、カップをあたしに差し出し、背を向けて立ち去ろうとする。
それでもあたしは……
勇気を出してザップの背中に飛び込む。
ガシッ!
絶対にザップを離さない!
「けどね、そんなことどうでもいいわ! あたしはザップについていく。逃げられてもついていく。あたしがそうしたいから!」
ザップの背中は広くて暖かい。けど、小刻みに震えている。
「マイ姉様、離れて下さい! ご主人様が固まってますよ! と言うわけで、私もついて行きたいからついて行く事にしました。地の果てまででもついて行きます。逃がしませんよ!」
アイちゃんが、あたしを引き剥がそうとする。けど、負けないわ。しばらくして、ザップは振り返ると優しくあたしの手を振りほどく。
「勝手な奴らだな! 好きにしろ……」
そう言うとザップは座って空のカップを差し出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あの時は、思いっきりザップに抱きついたけど、最近、記憶の限り、あたしはザップをハグしてないわ。なんか、ノノやジブルとか、たまにおんぶしてもらってるのに。けど、なんかキッカケがないと……
読んでいただきありがとうございます。
一応、下に40話へのリンク張っておきます。よろしかったらどーぞ。
https://ncode.syosetu.com/n8450gq/40/
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