表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

841/2108

 呪い


「ザップ、もっとキリキリ歩くのかしら。そんなんじゃ日が暮れるわよ」


 僕の背中の上でノノが口を開く。今日はノノがギルドで受けた依頼に付き添っている。街の近くの森で狩人が見つけた呪具らしいものの危険性を調べて欲しいとの事だ。報酬は雀の涙だけど、ノノは呪具というものに心引かれて引き受けた。彼女は出発前に誰かを護衛に連れていこうと思って家に帰ってきて、その時たまたま暇しているのが僕しかいなくて、半ば強引に連れ出された。そして、しばらく彼女は歩くと街さえ出てないのに、『もう歩けなーい』とか甘え始めて、止むなくおんぶしてる次第だ。いかん、調子が狂う。おでぶの時だったら『甘えるな』で突っぱねてたはずだが、痩せて違う生き物になったノノの言うことはついつい聞いてしまう。可愛いは正義、それは真理だ。

 ノノはもっと急いで欲しいようだな。ちょっと脅かすか。僕は収納の力を使って空気抵抗を無くして全力疾走する『荷物持ち走り』に移行する。


「キャアアアアアアアーッ!」


 ノノが可愛らしい悲鳴を上げて、しがみついてくる。いかん、ノノなのに、なんかちょっと嬉しい。

 そして、森に入り、すぐに目的地についた。ノノを背中から降ろすと、そのまま地面にへたり込む。


「死ぬかと思ったかしら。目の前が見えない中速度が出ると怖いわね。あ、ちょっと出たかも」


「ま、まじか?」


 もしかして、僕の背中で……


「何、赤くなってるのかしら。冗談よ、冗談。そう簡単にノノは漏らさないわ。こう見えても古竜や神族相手にも全くビビらなかったんだから」


 なんだかなー、見た目は変わっても中身は相変わらず残念なままだな。


「と言う訳で前が見えるように、帰りは肩車で走るのかしら」


「却下」


 ノノはワンピースだ。肩車なんて僕には無理だ。


「じゃ、お姫様だっこ」


「むむむっ。まあ、それならいいか。ぎゃあぎゃあ騒がれるのもなんだしな」


「決まりね。それで、例のモノはどこかしら?」


 ノノはフラフラと森を歩き始める。


「どこ行ってるんだ?」


「ブツの所。微かな呪いの残滓があるから、それを辿って、あ、あった」


 ノノの指差した先には木に釘で打ちつけられた藁で出来た何か。よく見ると手足が分かれていて人形みたいだな。


「なんだ、あれ?」


「呪いの藁人形よ。まだあんなチンケな呪いを使ってる人がいるのね」


「どういう呪いなんだ?」


「真夜中にあの人形に釘を刺すのを人に見られずに1週間続けたら、相手が呪われるってヤツよ。しかも途中で見られたら自分に呪いが返るっていう面倒くさいやつよ。東方伝来の呪術でだいたい恋愛のこじれとかで使われる事が多いわ。つまんないわね、呪術目標には全く効いてないみたいね。帰りましょ」


「そうなのか?」


「じゃ、お姫様だっこね」


「あ、ああ。しょうがないな」


 そして、僕らは森を後にした。けど、街からここまで普通は歩いて30分くらいはかかるだろう。しかもこの森は弱い魔物が出る事もある。そんなリスクを冒してまで、呪いを実行するのってどんな凄まじい恨みが有るのだろうか。


 そしてその夜。


 僕は皆が寝静まったのを確認し、森に向かう。

 件の藁人形の所に行って見るが、誰も居ない。そう思ったら人の気配が。とりあえず、音を立てないように木陰に隠れる。な、なんだありゃ? 闇の中浮かぶ人影。真っ白な衣装に、頭に鉄の輪っかみたいなのをかぶり、それに蝋燭が2本立ててある。髪の毛は前に垂れていてその顔は見えない。人間なのか? 体に悪寒がはしり肌が粟立つ。よく見ると蝋燭についているのは火じゃ無くて小さな魔法の灯りっぽい。そうだよな頭に蝋燭立ててたら1つ間違えたら髪の毛に引火するもんな。僕の経験上、髪の毛って意外に良く燃えるもんな。僕はびくつきながら観察する。白い服は東方風の前開きの服で、豊かな胸から女性だと思われる。彼女はズリズリと進み、藁人形の前に立つ。そして釘と小さなハンマーを出して釘を人形に添える。


「ザップ! くたばりやがれーっ!」


 女はハンマーを振り上げ、その時髪が跳ね上がり顔が見える。憤怒の表情に光が深い陰影を刻み、まるで、幽鬼のようだ。


「ヒィーッ!」


 ついその形相と、いきなり僕の名前を叫ばれたので動転して声が漏れた。


「だーれーだー」


 僕の方を向く女性。あ、よく見ると、ポポロ、昔一緒のパーティーにいた魔法使いポポロだ。やべぇ、コイツノーメイクだとめっちゃ怖いわ。眉毛ねーし。


「うぐ、うぐぐっ」


 ポポロは胸を押さえて後ろに倒れる。なんだ、あ、そういえば、見られたら自分に呪いが返るってノノが言ってたような?


 近づくいても動かない。口の上に手をかざすと、ポポロは息をしてない。確か、こういう時は、心臓をマッサージしたら蘇生する事があるって聞いた事が。僕は躊躇わずポポロの胸をやり過ぎない程度に押してやる。いかん、豊かな胸が手に……


「ぐはっ」


 よかった。ポポロは息をし始めた。


「見つけましたよ、マイ姉様。ご主人様が女性の胸を揉みまくってます」


「ええーっ! 何してるのザップ」


 げっ、アンとマイの声が……


「待て待て、話を聞け!」


「問答無用よ!」


 マイの跳び蹴りが僕に刺さる。そして、僕はマイとアンにボコボコにされた。


「あら、やっぱり、呪いって効果あるのね」


 ボロボロになった僕をポポロが見下ろしている。


 呪いじゃないわい……



 この話も『いいね』少ないです(T_T)


 ホラー系って需要少ないんですね。


 読んでいただきありがとうございます。


 みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。


 とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 下から集英社のオフィシャルサイトに移動できます。よろしくお願いします。
最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ