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 筋肉戦闘


「ザップ殿、本日はお願いがあり馳せ参じました」


 僕の前で土下座する肉塊。筋肉を限界まで鍛えている変態ダークエルフのレリーフだ。頼むから往来での土下座は勘弁して欲しい。僕はつつがない日々を送りたいのだ。道の真ん中で奴が土下座しているおかげで、馬車数台が通れなく止まっている。何の罵声も飛んでこないのは、コイツにビビってだろう。目が合ったら殺されそうだもんな。


「何の頼みかわからないが、とりあえず頭を上げてくれ。こんな所じゃ人様に迷惑だろ」


「ということは了承して頂けるのですか?」


「まあ、待て。とりあえず、話だけでも聞かせろ」


 僕はレリーフを立ち上がらせて、そばにあるカフェに誘う。


「実はですね。貴殿の有している、ザップ・ハンマーなる者と戦いたいのであります」


 何かいつの間にかレリーフって変な喋り方するようになったな。筋肉は言葉使いにも影響するのか?


「どういう事だ?」


「この前、ラパンが私より、ザップ殿のハンマーの化身、ザップ・ハンマー殿の方が私より凄まじいと言ってもましたので、胸を借りたい次第です」


「ああね。解った。好きにすればいいよ」


 僕のハンマーの化身の筋肉バカの事か。まあ、好きなだけ戦えばいいよ。


「有難き幸せ。では段取りつき次第連絡致しますね」


 レリーフはそう言うと、小躍りしながら駆けて行った。アイツもバトルジャンキーなのか。回りはそういう奴ばかりだな。僕は平和主義なのに。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「それでは、猿人間魔王ザップの守護神、ザップ・ハンマーと、王都最強冒険者『地獄の愚者』の一員レリーフとのエキシビションマッチを行いたいと思います」


 ワアアアアアアアーッ。


 導師ジブルのナレーションにより、コロシアムは割れんばかりの熱狂に包まれる。何故だ? なんでこんなに人が集まってるんだ。王都のコロシアムは満席だ。ちなみに僕は袖で成り行きを見守っている。


「それでは戦いを始めたいと思います。両者位置について下さい」


 レリーフがコロシアム中央の石で出来た闘技場に上がる。奴は上半身裸にくれないのブーメランパンツだ。今から戦いなのにその軽装、馬鹿なのか?


「出でよ、ザップ・ハンマー!」


 僕は収納からハンマーを出して、ザップ力? を注入する。やおら現れる筋肉ダルマ。僕のハンマーの化身、ザップ・ハンマーだ。禿頭にヒゲもじゃ、過積載の筋肉。コイツも何故か青のブーメランパンツだ。キモイ。


「行って参りますっ!」


 そう言うと筋肉ダルマは壇上に駆け出した。


「それではいきます。定番のモストマスキュラー!」


 ジブルのアナウンスで、壇上のレリーフとハンマーは大胸筋と上腕二頭筋を誇示したポージングをする。嫌な事にレリーフのおかげで筋肉の名前を覚えつつある。

 なんだ、なんの戦いなんだ? もしかして筋肉を競ってるのか? 確かに平和的ではあるが、気持ちよ悪いことこの上ない。けど、コロシアムは大熱狂に包まれる。しかも観客は若い女性が多い。もしかして、僕がおかしくて筋肉って人気あるのか?


 そして、2人は壇上で筋肉を披露し続けた。何なんだここは? ハンマーの方がプロポーションはいいが、見た目的にはレリーフの筋肉の方がデカい。これは質と量の戦いになるだろう。何、冷静に分析してるんだ僕は?

 ハンマーの活動限界は3分のはずなのにそれより明らかに長い時間2人はポージングしてハンマーは戻ってきて武器に戻る。


「皆の筋肉への愛が、私に力をくれました」


 何かハンマーが言ってるが、そんな事聞いてないわ。


「それでは、審議に移りたいと思います。皆様の拍手の量が勝敗を決めます」


 ジブルはそのあとレリーフとハンマーの名前を叫ぶ。僕的にはどっちに対する拍手の量も同じに感じた。


「ほぼ僅差でしたが、勝者レリーフ!」


 ジブルの声に壇上に飛び出すレリーフ。両手を上げて観客にアピールする。


「「レリーフ! レリーフ! レリーフ!」」


 シュプレヒコールは鳴り止まない。王都最高の筋肉が決定した瞬間だ。僕もその熱気に飲まれそうになる。そんなに凄い事なのか?


「ザップ、俺達の負けだ。ゼロ、ゼロからまた始めよう。あちらの筋肉は完全に長い修練により手に入れた本物。我々の筋肉は与えられたものにすぎない。一から鍛えなおしてまたチャレンジしよう」


 頭の中に響く野太い声。ハンマーだ。


「そうだな。人を巻き込もうとするな。お前1人で頑張りやがれ」


 けど、僕も少し鍛える事を決心した。やっぱだらしない体よりは筋肉の方がマシなんだな。

読んでいただきありがとうございます。


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