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 姫と筋肉 筋肉いん行列


「おお、奇遇だな。お前もここのラーメンに興味あるのか?」


 聞き覚えがある声を耳にして振り返る。やっぱりレリーフだ。ショートパンツにタンクトップにサンダル。2メートルを超える巨体に余すところなく装備された鍛え上げられた筋肉。浅黒い肌にサラサラな銀髪に尖った耳。最近は闇の巨人ダークジャイアントに間違えられるけど、本人言うにはダークエルフらしい。誰も信じないけど。職業クラスは自称死霊術士ネクロマンサー、その魔法が役にたつのを見たことないけど。この前、激デブになったはずなのにもう回復している。しかもまた一回り体が大っきくなってるような?

 なんでこんな所でコイツに遭遇せにゃならんのだろうか?


 僕の名前はラパン・グロー、最近は美少女冒険者と影では呼ばれているらしくて鼻が高い。今日は何してるかと言うと、王都に新しく大人気のラーメンという麺を出しているお店があるとの事で足を運び、そのお店の前の行列に並んでいるところだ。そのラーメンのスープは醤油とんこつというもので、かなり癖があるらしい。友人数人誘ったのだが、臭いがきつそうとの事でことごとく袖にされた。それでも僕は食べてみたかったので、足を運んだ。何故か僕が1人で王都に来る時には、筋肉変態のレリーフとの遭遇率が高いが、まさかラーメンの行列で出会うとは思わなかった。レリーフは基本的に豆ばっか食べてるから、他の物は食べないのかと勘違いしていた。


「うん、良い天気だな。レリーフ」


 僕は見なかったかった事にして即座に前を向く。


「ケイト、スザンナ、ケイト、スザンナ」


 後ろで人名を呼んでいるが、あれは人の名前ではない。奴の大胸筋の名前だ。また始めやがったな、腕立て伏せ。頼むから行列に並びながら腕立て伏せするのは止めて欲しい。けど、絡んで同類だとは思われたくないので、放置しておく事にする。

 行列は進んでいくのに、後ろの掛け声もついてくる。もしかして腕立て伏せしながら前進しているのか? 興味は湧くが我慢だ。見たら負けだ。


「「「オオオオオオッ!」」」


 後ろからどよめきが起こる。ん、何だろう。我慢出来ずに振り返るとそこにはローブを纏った骸骨が? え、またアンデッド?


「ここに並んでた大男はどこいきました?」


 骸骨の後ろに並んでるオッサンに聞く。


「何か、走ってどっかいきましたけど?」


 もしかして、何かの用事でコイツは代わりに並んでるのか?


「我は闇の王『死霊皇帝リッチ・エンペラー』主様は、はばかりにいかれました!」


 骨が空気を振るわせて大音声でのたまう。コイツ喋れるの? 


「食う前に大声ではばかりいうなや! いかれましたじゃなく、イカれてるだろ」


「小娘、娘子が大声ではばかりというものではない。品性を疑われるぞ」


 非常識の塊のアンデッドに常識について説教された。しかも注目されたくないのに、辺りの目は僕たちに注がれている。


「と、とにかく大人しくならべ」


「お前こそな」


 口の減らない骸骨だ。


「全く、お前は静かに行列に並ぶ事も出来んのか? 相変わらず落ち着きないな」


 振り返るとレリーフ。イラッとする。


「お前のせいやろが! 骸骨を身代わりに並ばせるなや!」


 とりあえず放った右ストレートがレリーフの胸に刺さる。なんだ、まるで大地を殴ったような感触。全く効いてない。結構力入れたのに。


「おお、良いパンチだ。ケイトだけじゃ無くスザンナにもあげてくれ」


 左大胸筋をビックンビックンさせている。ヤバいSAN値がゴリゴリ削られる。ちなみにSAN値とは正気度とも言われていて0になるとレッツゴークレイジーだ。

 ヤバい、辺りからの視線が痛い。しかもなんかひそひそ話も聞こえる。僕は目立つのは嫌いじゃないが、晒し者は簡便して欲しい。顔が熱くなるのを感じる。逃げ出すか? いや、人気のラーメン食べたい!


「レリーフ君、こんな所でアンデッド召喚したらいけないよ。皆さんがビックリするからね」


「何を言ってるんだ? こんな低位のアンデッド、犬や猫と変わらないだろ」


「はい、わたくしめなど、主様から見たら犬猫以下です」


 レリーフに骨が追従する。


「おい、骨君、君はエンペラーとか言ってたよね。レリーフが勘違いするから、猫かぶるの止めなさい。あと、レリーフ君、自分を基準に物事を考えるの止めようか? 市井の人々は君と違ってもっとデリケートなんだから」


「ああ、善処する」


 レリーフはそういうと骨をもとの世界に帰した。解ってくれたか?


 勘違いだった。それからもただ並ぶだけのはずなのに、奴は暴走しまくった。絡みたくねー……




 


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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