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 巨大ザリガニ(後編)


「ご主人様、頑張ってくださーい!」


 アンから声援が飛ぶ。


「何が頑張れだよ! 覚えてろよ」


 僕は高々と持ち上げられる。ザリガニのハサミに腰を挟まれている。


「ザップ、ハサミは傷つけないでね。高く売れそうだから」


 マイは全く動じてない。まあ、ただ挟まれてるだけで、痛くは無いんだけど。


「おいおい、ハサミより俺の心配しろよな」


「ご主人様、ザリガニ釣るはずが、ザリガニに釣られてないですか?」


「じゃっかましいわい!」


 僕はマイに言われた通り、ハサミを壊さないように蹴って脱出する。水に落ち水面に上がると、ザリガニは水面から頭と両のハサミを出して、ハサミを高々と上げている。これってよくザリガニがする威嚇のポーズだよな。なんとなく格好いい。童心をくすぐるポーズだ。

 しばらくザリガニと対峙する。僕は泳ぎは苦手だが、なんとか立ち泳ぎは出来る。考察するに奴は多分池の底に立ってるのだろう。そこまでここの水位は深くない。けどどうするか? 僕の頭の中に昔食べたロブスターの煮込みが浮かぶ。確かその時のロブスターは縦に輪切りになっていた。綺麗に輪切りにしたら商品価値は落ちないはず。僕はポータルを足場にして水中から出て水面にポータルを配しながら走る。マイ達からは水面を走ってるように見えるはずだ。水面走り、それは浪漫の1つだ。


「絶剣山殺しマウントスレイヤー!」


 とりあえず、武器名を叫ぶ。これも必須だ。やるのとやらないのとではテンションの上がり方が違う。

 収納から出した30メートルはある化け物大剣を掲げ振り下ろす。終わったな。


 ひょこん!


 巨大なザリガニの頭が瞬時に消え失せる。潜りやがった。関係ないな。そのまま剣を振り下ろす。


 ゴンッ……


 手に届く確かな感触。けど、切れなかった。水に勢いを殺されたのもあるが、コイツめっちゃ固いぞ。感触から結構遠くに行ってやがる。僕は大剣をしまい勇者の剣を手に水面を走る。そして収納ポータルを射出して水に飛び込む。

 結構深いな。池の底に巨大ザリガニが見える。僕はポータルから水を出し入れする事で高速移動して奴に近づく。切角だから勇者の剣で頭の中だけに突き刺して綺麗なまま討伐してやる。間合いに入った。勢いに任せて剣を突き出す。けど、その瞬間奴は消える。そして、大きなハサミが僕に襲いかかってくる。なんとかかわし、また高速で近づくが寸での所で奴は後方に瞬間移動する。それを何度か繰り返し、奴が尻尾を曲げて水を掻き移動してるのに気付く。こりゃ埒があかんな。けど、対抗策はいつものやつだ。そしてまた近づき、奴の尻尾を注視して動いた瞬間に辺りの水を収納に入れる。


 スカッ。


 ザリガニの尻尾が空を切る。


「チェックメイト」


 僕の突き出した勇者の剣は何の抵抗もなくザリガニの頭に突き刺さる。振り上げた奴のハサミが下がるのと同時に水が押し寄せてくる。瞬間でザリガニを収納にしまうと、僕はさっき収納に入れた水をポータルから射出し水面に浮き上がる。そのまま跳び上がり角度を調節し、マイ達の前にシュタッと着地する。


「ザップ、さっきのでっかいやつは?」


 僕は答えずに収納から巨大ザリガニを出す。


「さっすが、ザップ。でっかーい」


 マイがはしゃいでいる。けど、でっかいと言われるのは男として少し嬉しいが、これ以上ツッコむと地獄を見るのでやめとく。


「依頼完遂ですね。けど、この大量なザリガニどうするんですか? 食べられるんですか?」


「食べられん事はないけど、こいつら多分臭いぞ」


「ギルドで買い取ってくれるとは思うけど、ここまで沢山は無理っぽいわね。けど、置いてったら腐って大変な事になりそうだし」


 昔、もっとでっかくしてやろうと思ってザリガニを飼ってたのを思い出す。たいていは世話を忘れて、その死骸の悪臭で成り行きに気付いたものだ。ザリガニは死んで腐ったらメッチャ臭い。

 とりあえず収納に全部ザリガニは入れて池を後にする事にした。ちゃんと釣竿とかも処分した。元来た時より美しく。それが自然の中で遊ぶマナーだ。ザリガニはデカすぎたけど、童心に返る事が出来た依頼だった。



 

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