続空中戦
「デル、こういう時はどうやって戦うんだ?」
僕は上からデルを見下ろす。なんか少しだけ優越感があり気分がいい。前回は油断してやられたが、今回はそれは無い。
今日は久しぶりのデル先生の格闘技講座。準備運動、基礎練習を経て、今日も組み手だ。前回の雪辱を果たさねば。
「そうね、もし実戦だったら投擲具に頼るしかないわね。けど、ちゃんと対策は練っているわ」
デルは腰を落として構える。ここまでは前回と一緒だ。
僕はデルを見下ろす。道着の襟の中が見えるのだが、デルは今日はピタッとしたシャツを着ている。これじゃ何も見えない。これが練った対策なのか。残念だ。
前回はダイビングストレートをカウンターでやられたので、今回はそんなに大味な攻撃はしない。デルの頭の高さくらいを跳び蹴りの連打で攪乱し、隙を見てチョークに持ち込みギブアップをいただく予定だ。
「フッ、待ちに徹するのか。デルらしくないな」
「そうね、私らしく無いわね」
そう言ってデルは突進してくる。そうだそうでなくてはな。だが、戦いにおいて高低差は覆し難い。特に空中戦では高い所が有利だ。
デルはそのまま僕の下を駆け抜ける。振り返るが居ない。消えた?
「人間は真下も死角なのよ」
真下を見ると拳を突き上げたデルが!
「うごぉ!」
僕のお尻に激しい痛みが!
まじか! やりやがった可憐な姿のくせに何のためらいも無く、僕のお尻に拳を突き上げやがった。跳んで逃げようとしたが、両足をがっしり掴まれる。そう思うや否や、僕の体は回転し目の前にデルの体、もしかしてお股? そのまま僕の頭はデルの太股で挟まれる。いかん、道着の布ごしに柔らかい感触が……
どむっ!
「ぐぅあーーっ!」
つい口から悲鳴が漏れる。これはもしかして、伝説の技パイルドライバー! まさか体験する時がくるとは…… しかも美少女から! いってー、頭割れてるんじゃないか? おおおおおっ! 足を掴まれている。ジャイアントスィングってやつか? ぐるぐる回る景色。どうにかしないと。ダメだ。頭に血が溜まってクラクラする力が出ない。収納のポータルを出して掴もうとするが回転が速すぎる。
「うおおおおおおーっ」
いきなり手を放されて僕は宙に放り投げられる。感覚が狂って上下左右が解らない。ポータルを出すがスカりまくる。
ドゴン!
僕はしたたかに何かに打ちつけられる。岩か? えげつねー、殺す気か?
エリクサーを出して自分にかけ立ち上がるが、真っ直ぐ歩けない。目が回っている。
「ザップさん、こういう時はどうやって戦うんですか?」
フラフラしながら見上げると、太陽を背に空中に佇むデル。ゲッ、僕の技、既に会得されてたのか!
そして、デルの気が済むまで、僕は甚振られ続けた。くそぅ、もっと強くなってやる……
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