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第八十二話 荷物持ち勇者にいたぶられる

ありがとうございます。次で最終話です。


「黙れ! お前は俺が倒す!」


 僕は収納からミノタウロスの斧を出し両手で握りしめ構える。アレフに斬りかかるが軽くかわされ、さらに次々と斬りかかるが、ことごとくかわされる。

 攻撃が途切れた隙をつかれ蹴り飛ばされるが、また即座に立ち上がり、駆け出し斬りかかる。それも当たらず交差した時に勇者に袈裟懸けに大きく切り裂かれる。力が抜け、膝をつくが即座にエリクサーで回復する。


 不味い、確実に僕の方が分が悪い。


「ゴキブリみたいにしぶとい奴だな、首でも刎ねないと死ななさそうだな」


 アレフは、盾を持つ左手を僕に突き出す。


「荷物持ち、俺は勇者だ。お前には余り見せた事は無いが、物理攻撃だけじゃ無く、攻撃魔法、回復魔法も使えるのだよ」


 突き出したアレフの手が光る


「ブレイブ・サンダー!」


 アレフの手から放たれた雷が僕に迫る。辛うじてかわしたと思ったが蛇の様にうねる雷が進路を変えて僕に突き刺さる。


「ギャアアアッ!」


 激痛に思わず叫び声を上げてしまう。


 僕は即座にエリクサーをかける。火傷は癒えたが、体が痺れて思うように動けない。


 ドスッ!


 近づいてきたアレフが僕の腹に剣を突き立て蹴って引き抜く。


「ぐぉ!」


 普通だったら致命傷だ即座にエリクサーをかける。よかった上手く収納は使える。


「おいおい、すげーな、あの傷を一瞬でかよ。便利だな。最後に1回だけチャンスをくれてやる。首を縦に振ったら助けてやる。その代わり、一生俺に仕えろ」


 そう言うと、アレフは僕の手、足、腹等を次々と突き刺す。


「ググッ……」


 すぐに治すが、痛みは生じる。我慢するが、口から苦悶の声が漏れる。


 アレフは強い。僕は強くなったけど、及ばなかった。ここでアレフに従うしか無いのだろうか?


 最悪仕えると言って逃げてもいいし……


 逃げてどうする。ポルトは殺されると思うし、そんな僕に誰かついて来てくれるだろうか。


 マイの方をみる。目が合う。小刻みに体が震えているのが解る。マイは首をゆっくり縦に振る。


 多分僕が逃げてもマイは許してついて来てくれるだろう。けど、僕は許せない。逃げ出した自分を一生許せないと思う。


「おいザップ! 考えを決めろ。痺れが取れたら面倒だからな。俺に従うか?  それとも首を刎ねられるか?」


 僕は痺れる口でなんとか言葉を絞り出す。


「死んでもお前には……従わない……クソ野郎!」


 アレフは剣を振り上げる。剣はまばゆく光をあげる。綺麗だ。なんでこのクソ野郎が勇者で僕は荷物持ちなんだろう。

 けど、僕は荷物持ちで良かった。マイたちとも出会えたし、強くなる事が出来た。


「お前は強かった。さらばだ『最強の荷物持ち』」


 アレフの剣が僕の首を目がけて振り下ろされる。その言葉が僕に好機を与えてくれた。




 そうだ!




 勘違いしていた……




 僕は荷物持ち……




『最強の荷物持ち』! 




『最強の荷物持ち』だ!!


 

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