大型連休
時間が無いです(T_T)
やっと少し、改稿できました。改めて、やおい(やまなし、おちなし、いみなし)で草です。2022.5.6
『ゴールデンウィーク』
何がゴールデンなのか解らないが、なんか世間では今、大型連休に突入しているらしい。ここ王国では国主催で今の時期に連休を作って、国民に休息を与えているそうだ。
だが、僕たち冒険者には関係ない。
冒険者の生活は『月・月・火・水・木・金・金』。要するに土日なんか無い。我々冒険者は、休むと稼ぎが無くなるので働くしかない。稼ぎが無くなると、飯を食えないし、住む所も無くなる。まあ、僕は自宅を持ってるから何とか住む所には困らないが、飯はやたら食うのに稼ぎが少ない者を3人も抱えているから大変だ。とは言っても仕事には困らない。冒険者ギルドに顔を出すと、休みに傷病者が居なくなる事は無いので、常に薬草採取系の依頼はあるし、休みだからといって魔物が休む訳ではないので、討伐系の依頼が尽きる事は無い。
僕たち冒険者には休みは無い。なぜならば、僕たちを求める者がいるからだ。
僕は今日も意気揚々と冒険者ギルドの扉を開く。そこにはまだ見たことのない、胸躍らせる冒険が待ち受けている事だろう。
「ザップー、ちょっと移動して貰えないかなー?」
ソファで寝っ転がっている僕に、マイが張り付けたような笑顔で話しかけてきた。
あ、これは多分、少し怒ってそうだな。本気で雷を落とされる前に、早々と自室に退避するとするか。
「あ、ごめんごめん。掃除するんだよね。すぐどくよ」
僕は立ち上がり、自室に向かおうとする。その僕の手をマイががっしと掴む。ん、まだ何かあるのか?
「うん。それより、ザップ、いつになったら働くの? 最近ゴロゴロばっかで少し太ってきたんじゃない?」
僕は腹肉を摘まむ。む、少し肥えたかな?
「そうかな? オブやノノに比べたら大した事ないと思うが。それに、世間では連休らしいじゃないか」
人が休んでいるのに働くのは何か気が引ける。まあ、人が働いてても働くのは気が引けるが。しばらく激動だったから、もうしばらくゆっくりしてたいものだ。
「ザップ、あの子たちと自分を比べるなんて話にならないわ。そうね、ノノを呼んできて、魔法でぽっちゃりにして貰おうかな。そしたらザップが働くかもね」
今から、より暑くなるのに、ぽっちゃりは困る。余計暑くなりそうだ。
「待ってくれ。それは勘弁してくれ。わかった。わかった。じゃあ、今からなんか仕事しに行ってくるよ」
やっとマイが手を放してくれる。まるで、万力にでも挟まれたかのようにびくともしなかった。
「いってらっしゃい、ザップ。あたしは今日は1日掃除したいから、しばらくは外にいてね。晩御飯は奮発するから楽しみにしててね」
マイの笑顔に見送られ、僕はこの街の仮設冒険者ギルドへと向かった。街の店はいたる所で『休業中』の貼り紙がしてある。うん、大型連休だもんな。
けど、僕は冒険者。冒険者には休みは無いのだ。そんな事考えながら、僕はギルドの扉を開いた。