雨の降る日
「今日は、行くの諦めるか」
窓の外は大雨。正直その中どっか行くのは億劫だ。
「そうね。また明日にしましょう」
マイが賛同してくれる。今日は王都でなにか討伐系の依頼でも受けようかと思って、昨日からみんなで話して準備してたのだが、大雨なんでしょうがない。最近、僕たちのいる街では大した依頼が無いので今日はゆっくりするか。そこまで金銭に困ってる訳ではないし。
ちなみに、僕たちは今、家のリビングでコーヒーなどいただいている。マイ、アン、オブ、ノノがいて、ジブルは仕事だ。さっきジブルはブツブツ言いながら出て行った。
「では、せっかくの雨ですし、僕は外に行きますね」
ぽっちゃり少年のオブはそう言うと服を脱ぎ始める。
「お前、何する気だ?」
「え、何って、せっかくの雨ですよ、水浴びしないと」
ん、なんかデジャヴな絡みだな? 昔アンも同じ事言ってたような? ドラゴンたちにとって雨はシャワーのようなものなのか?
「お前、毎日風呂入ってるだろ。わざわざ雨にあたる必要ないだろ」
「それはそれ、これはこれ。なんかじめじめして気持ち悪いでしょ。裸で雨に打たれると、そんな些細な事、全て忘れる事できますよ。ザップも一緒にどうですか」
満面な笑顔で真正のアホみたいな事言ってやがる。ダメだ。コイツは何言っても聞かなさそうだ。
「それ、いいわね。わたしも賛成。なんか寝汗かいてて気持ち悪いと思ってたところよ」
ノノも賛同する。勝手にすればいいよ。
「それは魅力的ですね、私もご一緒しますよ」
アンも食いついてくる。
「最近は風呂などという贅沢なものがありますけど、昔を思い出して自然の恵みを堪能するのもいいかもですね。今の季節は雨を浴びるのにはとっても良さそうですもんね」
アンがしみじみと語る。雨を浴びる事が自然の恵みを堪能する事かどうかは疑問が残るが、このままだと、オブ、ノノ、アンの3人は外で雨浴び始めそうだな。けど、コイツらがそんなに望むと言う事は、もしかして雨浴びって結構気持ちいいのか? すこしワクワクしてきた気がする。冒険、これも冒険なのではないか?
「マイはいかないのかしら?」
ノノが尋ねる。
「あたしは、遠慮しとくわ。体冷えそうだし。けど、裸は駄目よ。ちゃんと水着を着てね。ここは町中なんだから」
まあ、マイの言い分は当たり前だな。けど、冒険というものは、えてして人がなし得ない事をする事だ。僕の心は定まった。
そして、僕たちは水着に着替え、大雨の中に飛び出した。
あ、これ気持ちいいわ。雨がべたつく汗を洗い流してくれる。ああ、自然の恵みだな。ん、そういえば、僕は最初は反対してたような?
僕たちに近づいてくる1つの影。傘を差した隣の店のメイド服の少女、ラパンだ。
「ザップ、楽しそうだけど、もっと自分の年齢を考えた方がいいと思うよ」
そう言うとラパンは去って行った。僕は呆然と立ち尽くした。
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