腐食の王
我の名前はオブシワン。闇に生まれ闇に生きる最古の最強の竜の一角。『黒曜の杖』の名を冠する魔法必中の権能を有する古竜の化身だ。闇の竜を統べる者、『暗黒竜王』とも、その口から放たれるブレスは全てのものを腐食させる故に『腐食の王』とも呼ばれている。
我は今、全ての虫ケラ共に滅びをもたらさんため、破壊と滅びをこの世に撒き散らしている。
「ありがとう、オブ君。もう、嫌になっちゃうわよね。最近、蝿が多くって」
我の頭をナデナデしてくれる猫耳の美人なお姉さん。マイだ。感無量だ。
「これくらい僕に任せて下さい。今の季節は蝿が多いですからね。外よりも家の中の方が温かいじゃないですか。ですから蝿が家の中に入ってくるんですよ。もうちょっと外が温かくなれば、外の方が過ごしやすいから蝿も入って来にくくなるんですよ。『五月蝿』って書いて『うるさい』って言うくらいですからねー」
我は蝿共に腐食の息を吐きかけるのを中断する。軽めに吐いた腐食の息はいい塩梅に奴らを絶命させる事が出来る。
「さっすがねー。オブ君って物知りなのね。そうね、そろそろご飯よ」
マイは更に我の頭をナデナデしてくれる。フッ、致し方ないな。これはたまらない。食事の後にはまた再び虫ケラ共に滅びをもたらせてやる事にしよう。
今日の食事は鶏の唐揚げだ。今日もザップとマイと見た目は幼女の導師ジブル、同門のアイローンボーと妖精王ノースノスフェラティーと食卓を囲む。鶏の唐揚げ、こいつは果てしなく美味だ。我の好物トップスリーに入る。我はそろそろ痩せようと思うのだが、こうもマイのご飯が美味すぎるとついつい食べ過ぎてしまう。
「アイローンボー! 僕はお前に決闘を申し込む」
「キャハハハハハッ。オブが私と決闘? かかってきやがれ!」
我の憤りを、アイローンボーは笑い飛ばす。許さない。よりにもよって奴めは我の残していた最後の唐揚げを掻っ攫いやがった!
「はいはい、オブ君もアンちゃんも喧嘩しないの。はい、オブ君。これで許してあげて」
マイはそう言うと、我の皿にマイの最後の唐揚げを乗っけてくれた。マイ、まじ女神。命拾いしたなアイローンボー。我は最高の唐揚げを口に含み満足した。
食事の後、我は外で瞑想する。瞑想だ決して昼寝ではない。
「オブ君、ちょっとお願いしていい?」
瞑想している我に話しかけるのはラパンという少女。隣の店で働いている。その手にはバケツ1杯のミルク。
「うん、僕に任せて」
我の加減した吐息をミルクに吹きかける。ミルクを混ぜるラパン。しばらくするとそれは上質のチーズに変わる。我の力をもってすると造作無い事。
「うわー。さすがだねオブ君。これは報酬だよ」
ラパンは大喜びすると、我の横に容器にチーズを切って置いて去っていく。
「オブ殿、もしよろしかったら、例のヤツをお願い出来ないだろうか?」
次にやって来たのはレリーフと呼ばれている大男。手にはバケツ1杯の豆。我をしてもコイツの種族が解らない。ハーフオーガか? それともダークジャイアントか?
「うん、いいよ」
我はバケツの豆に息を吹きかける。
「おお、これだこれ。さすがオブ殿。オブ殿の納豆は最高だ! 少ないがとっておいてくれ」
レリーフは丼1杯の納豆を残して去っていく。アイツの少ないって感覚おかしくねーか?
「うわ、オブ君、それどうしたの?」
マイが駆け寄ってきて、我の戦利品を見る。
「どうぞ、マイさん。これで、美味しいご飯作ってね」
「ありがとう、オブ君」
マイがまた我の頭をナデナデしてくれる。マイまじ女神。よし、明日も我は頑張るとするか。最強最悪の腐食の王として。
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