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 いふ おわり


「待ってザップ。あたしとザップの出会いを見てみたいわ。ルル、あんたこれの使い方解るでしょ?」


「はい、そうですね。多分オッケーだと思います」


 マイが例のヘアバンドをはめる。マイが見たいならしょうがないか。ノノとジブルをお仕置きするのは、後でだな。僕は再び席につく。部屋が暗くなり、スクリーンにはまた画像が映し出される。





「ウガ! ガルルルルル!」


 猫耳の少年に向かって威嚇しているバーバリアンにしか見えない生き物。でっかい猿にも見える。あ、あれってもしかして僕? という事は怯えているのはマイ男バージョン?

 そして猿人間は歩き出す。前屈み気味で、まじ猿みてーだ。正直自己嫌悪に陥りそうだ。

 そして、距離をおいて少年がついていく。



「グワアアアアッ!」


 猿人間は叫びながら少年に向かって駆け出す。


 ゴンッ! ガッ! ドゴッ!


 ハンマーで壁や床を滅多打ちにする猿人間。我ながら怖い。僕だったら、一目散に逃げ出す。さすがマイ男は度胸がある。そして猿人間は走り去る。


「待って下さい!」


 おお、マイ男は猿人間を追っかけてる。しばらく追っかけっこは続き、ズザザザーッとマイ男は転倒する。そこに近づく巨大な影、トロルだ。マイ男、ピンチ!


 ドゴッ!


 一撃でトロルの頭がぶっ飛ばされる。こ汚いマントをたなびかせ、マイ男の前に立つシルエット。僕だ。猿人間だ。うお、ちよっとかっけー。ヒーローみてーだ。猿人間は屈んで何かを拾ってマイ男に投げる。あれは多分マジックポーション。そして背を向けて歩きはじめた。その後ろをマイ男がついていくが、今度は猿人間は逃げ出さない。


「待って下さい! あなた、言葉がわかるんでしょ?」


 その言葉を聞こえないふりして歩いて行く猿人間。

 そして小部屋に入り階段を降りていく。階段を降りて、どっからともなく汚い肉を出して食いむしり始める猿人間。やべー、まじ野蛮だ。人には見えない。


「え、あなたどこからお肉をだしたのですか?」


 ノーリアクションで肉を食べ続ける猿人間。


「あなた、お腹がすいてるのですね、待っててください、せめて助けて貰ったお礼に食事をごちそうしますね」


 少年はリュックから水筒、小鍋と五徳と固形燃料、それと紙袋に入ったパンを出し魔法で燃料に火をつける。

 猿人間は、調理する少年を目ん玉飛び出るんじゃないかと思われるほど目をひんむいて見ている。悲しいな、僕ってあんなんだったのか……


 しばらくして、猿人間は鼻をヒクヒクし始める。


「ゴクリッ!」


 猿人間は大きく喉を鳴らす。


 少年は金属のカップとパンの乗った小皿を猿人間の前に置く。

 猿人間はそれをしばらく凝視し、目を逸らす。おあずけされた犬みてーだ。


「これだけしかないけど、冷める前にどうぞ」


 猿人間は再びカップとパンを凝視する。


 そして、ブルブル震える手で取ってそれを口にする。ごくごくと喉を鳴らして飲み、パンを千切ってスープに浸して食べる。そして、カップと皿を置くと滂沱と涙を流し始めた。


「ごちそうさま。ありがとう」


 猿人間が食べ終わり食器を渡す。少年はそれを布で拭いて片付けた。


「それは、お前の最後の飯だったんだろ。その飯の分くらいの仕事はしてやる」


 猿人間はマイ男に右手を差し出す。それをマイ男は両手でしっかりと握った。


 そして、画像は消え、部屋は明るくなった。




 パチパチパチパチパチパチ!


 部屋を包む万雷の拍手。


「女か男なんて関係ないわよ。ザップ、ザップはいつまでもあたしたちの、あたしの英雄だわ」


 マイはそう言うと、まぶたを拭った。


読んでいただきありがとうございます。


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