表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

815/2104

 いふ4


「じゃあ、次は僕がいくね」


 ラパンの声のあと、部屋が暗くなってスクリーンに画像が映し出される。




「あなたが、街に潜り込んだテロリストなのですか?」


 消え入りそうな儚い感じの顔に包帯を巻いてる少年だ。ラファの男バージョンだな。


「テロリスト? 違うな。俺はただの観光客だ」


 僕が尊大そうに答える。なんか僕の人工精霊、全体的に態度悪いな。僕はそんなつもりは無いんだけど、そう見えてるなら改めよう。


「ふうん、じゃ外の世界から来たんだね。ぼくは、あなたの話が聞きたいな」


 少年はそばにあったスツールを不器用に引き寄せて格子の前に座る。


「誰なんだお前?」


「ライト。ぼくは退屈なんだ……外には出られない。見ての通りだから……」


 ライトはゆるゆると包帯を取る。そこには赤くケロイド状に引き攣った皮膚と落ち窪んだ眼窩。


「お前……どうしたんだ?」


「昔ね、魔獣に襲われたんだ……ケルベロスって言うらしいよ。それよりもあなた、ぼくが怖くないの? 気持ち悪くないの?」


「馬鹿か。怖いわけあるか。そう言えば自己紹介がまだだったな、俺の名はザップだ。ザップ・グッドフェロー、荷物持ちだ」


 そして、僕はこっぱずかしい武勇伝を披露し始めた。


「悪いなポルト、決めたんだ世界を見て回る事を!」


 僕は手を突き出して大きなジェスチャーで締め括った。


「おおー、格好いい! ザップ!」


 ライトは僕に惜しみない拍手を送る。


「こういう時って、普通だったらおひねりとか渡すって聞いた事あるけど。ぼくは何も持ってないんだ。アメくらいしか持ってないよ……」


「俺、今さあ、とっても甘い物食べたい気分だなー!」


「そうなのか? じゃあアメ欲しい?」


「ああとっても欲しい」


「どうぞ!」


 少年は僕に紙にくるまれたアメをくれる。それを剥いて宙に放って食べる。


「あーあ、ぼくもザップみたいに外の世界を見て回りたいな。小っちゃい頃から魔法の勉強してきたから、普通に歩けるなら冒険者にもなれたのにな……」


「ん、ライトこっちに来いよ。今から起こる事は決して誰にも言うなよ」


「え、何、何なの? ザップ」


 ライトは椅子をずって近づいてくる。僕はエリクサーを出してライトにかける。


「え、何これ?」


 かけたエリクサーがライトに吸い込まれる。


「足が、顔が痒い」


 無くなってた右足は即座に生えて、顔の火傷所の皮膚が崩れ落ち、新しい皮膚がのぞく。落ち窪んだ眼窩も少年が瞬きする間に盛り上がり、澄んだ紅色の綺麗な瞳が現れる。


「あ、足、ぼくの足。目も見えるわ、や、火傷も無い……」


 ライトは足や顔を撫でる。


「アメのお礼だ。なんか不具合はないか?」


「え、嘘、夢みたい。ありがとう、ありがとうザップ……」


 ライトは蹲ると、激しく泣き始めた


 そして画面は消え、部屋は明るくなる。




 パチパチパチパチパチパチ!


 そして、部屋は拍手にしばらくつつまれた。



「ううっ。やっぱ。ザップはいい奴だ……」


 ラパンがすすり泣く声がする。縛られているから振り返れない。そろそろ縄、ほどいてもらえないだろうか? この縄、収納に入れられない。生き物って事だよな? なんの素材なんだ。気持ち悪いな?


「ほら見ろ、俺は女の子だけに優しい訳じゃないだろ」


「そうね、けど、ライト君は可愛いかったから例外だと思われます」


 ノノの冷たい声が響く。そろそろ、そのリケジョ風のキャラ止めて欲しい。少しムカつく。


「では次に参ります」


 ジブルの声でまた部屋が暗転してスクリーンに画像が映し出される。





 

「うぅ……」


 ベッドで少女が身を起こしている。え、ピオン? 女の子じゃん。いや、違う。胸が無い。という事は男の娘?


「自殺禁止!」


 画面上の僕がピオンを手で制する。


「無理。私は毒よ、すぐまた死ぬわ」


 うん、私って言ってるけど、多分男だ。声が若干低い。


「いや、死なない」


「無理よ、エリクサーって言う霊薬でも無い限り、私の中の毒は消えないわ」


「お前の首を繋げたのはエリクサーだ」


「え?」


「お前は盗賊スカウトか?」


「似たようなものよ」


 いかん、なんかピオンと画面上の僕の間になんか恋人同士チックな空気が流れている。背景に花とか出てきそうだ。


「幾らで雇える?」


「フフッ、さぁ、幾らかしらね……」


 そしてしばらくピオンと画面上の僕は笑顔で見つめ合う。そして画面は消えて部屋が明るくなる。





「そうですね。これでザップが女の子だけに優しい訳じゃないって事が解りました」


 ノノはそう言うと眼鏡をクイッと上げる。


「そりゃ、そうだろ」


 これで少しは汚名返上か?


「ザップは女の子だけじゃなく、ショタと男の娘もイケるという事が解りました」


 ノノが訳分からん事ほざいてる。頭の中で何かがプチンと切れた。


 ザワザワ、ザワザワ。


 ざわめくな。冗談に決まってるだろ。


「そんな訳あるかーーーっ! 今までの人生、女の子にしか興味ないわ。男なんか微塵も興味ないわ。俺が好きなのは女の子だーっ!」


「という訳で、言質とれました」


 ノノの言動は僕と違い冷静だ。


「ザップの回りが女性ばかりなのは、ザップが過度な女性好き故にです。さすが猿人間と呼ばれているだけありますね。性欲に忠実。頭の中もかなり猿寄りだと思われます。これにてこの会を終了します」


 くそう、なんて不毛だったんだ。ただの晒し者じゃないか。体は動かない。けど、世界魔法をぶっ放したりしたらここは魔道都市。高価なものが沢山あるから賠償金が怖すぎる。しょうがない。力押しだ。


 ぶちん!


 おお、やっと縄が切れた。


「ノノ君。素晴らしい高説をありがとう。ボクはお猿さんだから。何やっちゃうか分かんないなぁ。おら、そこに直れブタァ!」


「げっ、まさかあの縄を……ジブル、逃げるわよ!」


 ノノとジブルは一目散に逃げ出した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 下から集英社のオフィシャルサイトに移動できます。よろしくお願いします。
最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ