いふ2
「という訳で、もしアンが男だったら、ザップは問答無用で切り捨てました。ドラゴンに変身する強力な仲間ができる事より、生肉を食べる生活をとりました。男と群れるのが嫌という理由で」
ノノが淡々と言葉を紡ぐ。いや、そうじゃない。
「まて、あの時の俺は俺を捨てたパーティーに復讐する事で頭がいっぱいだったんだ」
「ダウト! それならドラゴンのアンちゃんがいた方が勝率が上がったはずよ」
ジブルが僕の言を遮る。そうだな、そう言われたら反論できない。
「それでは、次の方お願いします」
ノノの言葉に幾人も挙手する。
「アンジュさんたちお願いします」
ノノがそう言うと、ジブルがアンジュ達にヘアバンドを持って行く。
「それでは、始めるっすね」
アンジュ達がヘアバンドをして、しばらくすると部屋が暗くなり、スクリーンにまた新たな画像が映し出された。
「誰か荷物持ちいないっすか? 銀貨5枚、日帰りで銀貨5枚だすっすよ!」
赤毛の元気そうな少年が声を張っている。アンジュの男バージョンだろう。場所は多分王都の冒険者ギルド。
魔法使いのルルの男バージョンは、金髪で短髪。
エルフのデルは金髪ロングヘアだ。かなりのイケメンだ。
それと神官戦士のなんとかさん。悪いが名前を思い出せない。彼は黒髪で刈り上げてる。
「馬鹿かっ。戦闘の護衛を銀貨5枚で引き受ける奴いる訳ねーだろ」
画面の中の僕がボソリと呟く。そして、そのあとしばらく男バージョンのアンジュが声を張り上げ、そのあとトボトボと4人でギルドを後にした。
そして、画面は切り替わり夕暮れになった。座り込ながらチビチビ酒をのんでいる僕の隣の席が移される。男が2人酒を飲んでいる。
「なぁ、また新人がゴブリンにやられたんだってな」
「ああ、最近そういうの多いな。俺たちも気をつけないとな」
そして、画面はまた僕に戻る。
「自分の実力も解らない奴は、薬草採取でもしとけばいいんだよ」
画面の中の僕はそう言い捨てると席を立った。なんじゃこれ、嘘だろ、感じ悪すぎだろ。僕は鬼か?
そして部屋は明るくなった。
「ええーっ。まじすか。私達女の子で良かったっす。もし男だったらゴブリンにぶっ殺されてたんすね……」
アンジュが騒いでいる。後の3人はズーンとしてる。
「ま、待てよ。俺はあの時お前たちがとっても弱そうだったから助けたんだ。男だったお前たちは見るからに強そうだっただろ」
僕の言葉に答えてくれる者はいない。しばらく静寂が辺りを支配した。
「という訳で、ザップは困った美少女しか助けない。という事でよろしいでしょうか?」
ノノの言葉に頷く一同。みんなジト目で僕を見ている。
「あ、そうだ。俺、用事があるんだった」
僕は脱兎のように逃げ出した。この空気は無理だっ!