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 頭痛が痛い


「すいませーん、メニュー表下さーい」


 僕は手を上げて、女給を呼び止める。給仕していた彼女は走って行って僕にメニュー表を持ってきた。


 ここは、王都の飯が美味いと言われている食堂。頼んだものだけでは少し物足りなくて追加を頼もうと思った所だ。円卓を僕とジブルとアンで囲んでいる。マイとオブとノノは別行動で服を買っている。オブとノノは持っている服がローブと礼服だけなので、マイが普段着などを選んでいる。僕達はその時間の長さにウンザリして逃げて来た。


「ザップ、言おうかと迷ったけど」


 ジブルが複雑な表情で口を開く。僕はメニュー表から目を離す。


「メニュー表って言葉おかしいのよ。メニューって言葉自体に表って意味も含まれるのよ。頭痛が痛いと一緒で、同じ事を言ってるの。重複表現って言うのよ」


 へぇ、そうなのか。知らなかった。けど、何ていうか、ジブルの言い方が少しイラッと来た。僕は女給を呼んで注文する。


「そうか、けど、メニュー表って言ってる人は多いし通じるから問題ないんじゃないか?」


「まあ、そうだけど、その言葉を聞いて違和感を持つ人が一定数いることは確かよ。『食事を食べる』とか『馬から落馬する』とか言うのを聞いたら、なんか、『うんっ?』 ってなるでしょ。要はかっこ悪いのよ」


 そうだな。僕もそれは言わないな。なんか変な感じするしな。それに確かになんか賢く無さそうな表現だ。

 僕の隣ではアンが何事も無かったかのように黙々と食事している。まあ、彼女的にはどうでもいい事なんだろう。僕もどうでもいい事に思えてきた。


「言葉って、相手に物事を伝えるためのものだろ。伝われば問題無いし、どういう言葉を使うかはその人の自由で間違いか正解かなんでどうでもいいんじゃないか?」


 僕は投げやり気味に言う。なんかジブルって見た目幼女の癖に面倒くさい先生みたいだな。あ、実際、魔道都市で先生してるのか。


「ふうっ」


 ジブルはため息をつく。


「ザップ、あなたは王国で有名な冒険者でしょ、あなたが節度ある言動を取らないと、あなただけではなく、私達、ひいては王国まで文化水準が低いと思われるのよ。特に私は魔道都市アウフの評議会の一員。世界でトップクラスの頭脳派集団に属しているのよ。その私の連れがトンチンカンな事言ってたら困るのよ。そうね、ザップに解り易く言ったら、あなた、担々麺を食べるのにフォークは使わないでしょ?」


「ああ、当然箸だ!」


 箸でずるずるっと啜ってこその担々麺だ。フォークなんかで食べる奴は食べる資格なし。だけど、なんかジブルの言う事はカンに障る。


「だから、そう言う風な重文や重複表現って言われているものは、フォークで担々麺食べてるようなものなのよ。間違ってはいないけど不格好でイキじゃ無いのよ」


「まあ、なんとなく言いたい事は解ったよ」


 女給が頼んだ料理を持ってきたし、食べるとするか。僕は大きく息を吸って、


「よし、ジブル、食事を食べるぞ!」


 特にジブルを強調して大声を出す。


「ぶっ殺す!」


 ジブルが椅子を蹴って立ち上がる。アンはまだ食べ物が入っている皿を確保して席を移る。


 やれやれ、沸点の低い奴だ。


 僕はゆっくりと立ち上がった。


読んでいただきありがとうございます。


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