第八十一話 荷物持ち及ばず
あと数話で完結です。出来れば年内に。
「ハハハハハハッ! 本当によかった。この三種の神器を手に入れて」
勇者アレフは哄笑を漏らし、剣を掲げる。剣が黄金色のまばゆい光を放つ。
「『勇者のつるぎ』、先制必中攻撃スキルを持ち力を込めれば込めるほど切れ味を増し、この世に斬れないものは無いという」
目の前のアレフの姿がブレる。
僕はアレフの高速の踏み込みからの一撃をかわせず咄嗟にミノタウロス王のハンマーで受ける。
キィーーーン!
澄んだ音を立てて、ハンマーの先の鉄球が切り裂かれる。見事に両断され、鉄球が地に落ちる。追撃を避け大きく下がる。
ぼ、僕のハンマーが……
ほぼ柄だけになったそれを呆然と見つめる。
このハンマーは思い出深い、最初に倒したミノタウロスが残したものだ。いつも僕の傍らにあり、数多の敵を屠ってきた。相棒というより僕の体の一部のようなもので自信の源だった。
心にぽっかり穴が空いたみたいだ。
「ウォオオーッ!」
僕は叫びながら、勇者に向かって両手を向けドラゴンブレスを連打する。
「勇者の盾、あらゆる攻撃の威力を大幅に減らし、炎熱攻撃を吸い取り糧とする」
アレフは巻き上がる炎に呑まれるが、その中から地獄の底から響いてくるような低い落ち着いた声が聞こえる。
炎熱吸収、全く効いてないのか? むしろ回復させてるのか?
僕はブレスを止め、収納から出したミノタウロス武器やミノタウロスの角をアレフに全力で投げつける。
アレフは両手を上げ全てを受け止める。乾いた音がするだけで、全く効いてない様に見える。
「勇者の鎧、全ての物理攻撃をほぼすべてカットし、全てのステータスを底上げする。必中の加護もついている。さらに力を解放すると、潜在能力を解放し、爆発的に全ての能力を上げる!」
アレフはゆっくりと僕に駆け寄り斬りつけてくる。
収納からミノタウロスの斧を出し剣を受けるが簡単に切り裂かれる。何とか避けるが盾で殴りつけられる。
吹っ飛ばされるが、即座に立ち上がり、新しい斧を出して構える。
「残念だったな、ザップ! お前の方が俺よりも遙かに強い。死ぬ気で鍛えたんだろうな、よくやったよ、頑張った、頑張った」
アレフは話しながら斬りつけてくる。奴は軽く剣を振るってるだけだが、僕はかわすだけでやっとだ。剣は黄金色の眩い光を放っている。ほんの少し擦っただけで体が大きく切れる。
アレフの体を蹴りつけて、その反動で大きく距離をとりエリクサーを出し回復する。
「ハーッハッハ! 苦労して強くなったお前を、ただ勇者の三種の神器をもらっただけの俺が倒す。楽しいな! 楽しくてしょうがないな。いい顔してるなザップ。負け犬、いや家畜のような顔だ。所詮お前は荷物持ち、勇者にとっては家畜なんだよ!」
アレフは僕に剣を向ける。
「ハーッハッハッハッハッハーッ!」
アレフの心の底から楽しそうな哄笑がコロシアムに響き渡った。