ピンクムーン
眠れなくて、外を見ると、とっても綺麗なお月様が輝いてます。
「おっ、月が綺麗だな」
僕は空を見上げる。今日は満月のようだ。今日の月はいつもより若干黄味がかっていて、その光が暖かく感じる。
今日の夜は家の隣のレストラン兼バーの『みみずくの横ばい亭』でご飯を食べて、マイのお許しが出たのでお酒をゆっくり飲んでいた。
最近少し太ったからか、少しお酒に強くなって、エール2杯目までは飲ませて貰えるようになった。昔は2杯目から意識が飛んでいたから大きな飛躍だ。それで夜も更けて、オブとノノは先に帰って、マイとアンと帰途について外に出た。
「あっ、そう言えば、今日の月はピンクムーンって言うそうよ」
アンにしなだれかかってほろ酔いのマイが言う。ちょっと色っぽい。いいな。
「ん、ピンクムーン? そうか? どっからどう見てもピンク色には見えないぞ?」
僕は首を捻る。もしかしてマイは酔っ払って勘違いしてるんじゃないか?
「そうですよ。ピンクって言うより黄色っぽいですよ。強いていうならポテトチップムーンじゃないですか?」
アンにはポテチに見えるらしい。僕には金貨に見えるけどな。何でもみんな自分の好きなものに見えるのだろうな。
「ザップー、アンちゃん、なんて言うか、月の色の事じゃなくて、春には色んなピンク色のお花が咲くから、4月の満月はピンクムーンって言うそうよ。遠い国の部族の言葉から来てるらしいわ」
そう言って、マイは満月を見上げる。月も綺麗だけど、月明かりに照らされるマイはもっと綺麗だ。つい見とれてしまう。ここで、そう言う事をサラッと言えるような勇気が欲しい。マイがこっちを向いて目が合う。なんか気まずいな。
「そ、そうか、じゃ、4月のドラゴンはピンクドラゴンだな」
つい、訳が解らない事を言ってしまう。
「ご主人様、何言ってるんですか。止めて下さいよ、ピンクドラゴンってなんかエッチなドラゴンみたいじゃないですか」
アンが口を尖らせる。
「えー、いいじゃない、ピンクドラゴン。アンちゃんってとってもエッチじゃない、今日も服着てないし」
マイの手がアンの胸元に伸びる。そしてその手はアンの服を突き抜ける。いつも通りの魔法の服、見えてるだけで存在しない服を生みだしてるみたいだ。
「マイ姉様、酔っ払ってるでしょう。くすぐったいから胸触らないで下さい」
「酔っ払ってないわよ。ザップも触ってみる? 柔らかくてヒンヤリしててすべすべで気持ちいいわよ」
こりゃ、間違い無くマイは酔っ払ってるな。いつもだったら、エロ即お仕置きのマイのはずなのに、若干バグってる。それによく見ると、マイの服も若干乱れている。チューブトップにショートパンツなのだが、服がズレて下がっていて、胸の谷間が強調されている。僕は慌てて目をそらし、月を見上げる。
月は薄い黄金色だけど、やっぱりあれはピンクムーンだ。ピンクムーン、それは本当はちょっとエッチなお月様って意味なのかもしれないな。