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 姫と筋肉 再トレーニング開始

 お気づきだと思いますが、レリーフ大好きです。


「そうか、この私が、神竜王の攻撃で一撃でやられたのか……」


 僕はたまたま王都に用事で行ったら、たまたまレリーフに会ったので、ザップからトレースした記憶の中で見た、レリーフの話をした。僕たちが今居るのは王都の冒険者ギルドの前の道で、ただ話してるだけなのに、いつの間にか遠巻きに人だかりが出来ている。恥ずかしいな。何も面白い事しないつーの。


 僕の名前はラパン・グロー。魔法の絨毯の操縦なら多分王都で最高の実力をもつと思われる、冒険者兼ウェイトレスだ。最近の夢はお金を溜めて自分専用の魔法の絨毯を買う事だ。


「おいおい、そんなに凹むなよ。お前のパーティーのみんなは神竜王の攻撃で木っ端微塵になったらしいから、それに比べたら大したもんだろ。お前も神竜王が天使に突っ込んで自爆したのを見ただろ。あれはヤバすぎるって」


「いや、ラパン。ただ私の修行不足なだけだ。筋肉に不可能なんて無い! そうだ、もっと素晴らしい筋肉をつけねば」


 そう言うと、レリーフは腕を組み目を閉じる。今日もタンクトップで組んだ腕が筋肉を押し上げている。嫌な事に気付く。間違いなくコイツ、僕より胸でかいわ。


「ん、どうしたラパン。私のケイトとスザンナを見てるな。欲しいのか?」


 確かケイトは右の大胸筋、スザンナは左だったはず。ひょこぴょこと交互に躍動する。恐ろしい事に名前を覚えてしまってる……


「そんなゴツゴツな胸、欲しくないわ! 女子として死んじまう」


「安心しろ。ラパン。お前は既に女子として死んでいる」


「どういう意味だよ、ぶん殴るぞ!」


「そういう所だ。服装変えたら男の子にしかみえないぞ。もっと私みたいに穏やかにならないと、嫁の行き手がなくなるぞ」


「はいはい、もっと穏やかにね」


 僕の胸の事言ってるかと思ったら、気質の事だったのか。危うく墓穴を掘るとこだった。


「それはそうと、そうだ、鎧、すっごくいい鎧を着ればいいんじゃないか? 強固な鎧で筋肉を覆えばもっと防御力上がるんじゃないか?」


 僕は当然の提案をしてみる。コイツはたいてい薄着だ。冒険者なんだからまずは鎧でも着てみればいいんじゃ?


「却下だ。この世に筋肉に勝る鎧など無い」


 何、訳が解らん事言ってやがるんだ。筋肉でそんな何でも出来る訳が無いだろう。まあ、だけど、そもそもコイツが着られる鎧は特注でしかなさそうだけど。


「だが、私は今壁に突き当たっている。鍛えても鍛えても筋肉が応えてくれないんだ……」


 遠い目をするレリーフ。


「そりゃ、そうだろう。それ以上もう筋肉つかないんじゃないか?」


 レリーフの体を見る。筋肉だ。うん、筋肉だ。どう見てもレリーフの筋肉は人間の限界なんじゃないだろうか?


「お前たち、何をしてるのかしら?」


 誰も僕たちに近づいて来ない中、小柄な人物が人混みの中から現れた。ノノ、自称ハイエルフのぽっちゃり少女だ。


「誰だ、お前は、その耳は同族! 太った同族に会うのは初めてだ。教えてくれ、どうすればそんなに太る事が出来るんだ?」


 怪訝そうだったレリーフの目が輝く。ん、レリーフってぽっちゃりが好きなのか? それで僕には興味無さそうなのか? まあ、レリーフの好きなタイプなんてどうでもいいけど。


「ほう、ダークエルフね。あたしに喧嘩売ってるのかしら? なかなか痩せなくてイライラしてるのに」


 凄い事にノノは一発でレリーフをエルフと見破った。だいたい、オーガやハーフオーガと間違われるのに。痩せなくてイライラしてるって言ってる割にはその手には鶏の唐揚げが入った袋がある。唐揚げは痩せないだろ。


「いや、決して喧嘩売ってる訳ではない。効率的に太る方法を教えて欲しいのだ。それだけ脂肪をつけられたら、私の筋肉に更なる活力を与えられると思うのだ」


 レリーフは屈んでノノを見つめると頭を下げる。コイツ大丈夫なのか? 好き好んで太りたいって言う奴初めて見た。


「ラパン、お前付き合う男は選んだ方がいいわよ」


「付き合ってないわ!」


 つい声を荒げてしまった。


「しょうがないわね。美味しい唐揚げに免じてサービスしてあげるわ。2割増しよ。『暴食者グラトニー』」


 ノノの指から出た光がレリーフに迫る。いかんあれは、黒竜王の化身オブをデブにした最悪魔法!


「レリーフ避けろっ!」


「あばばばばばばばばおおうっ!」


 無防備なレリーフに魔法が刺さる。地獄、地獄絵図だ。逞しかったレリーフの体からブヨブヨとした肉塊が湧き出してくる。タンクトップがはじけ、穿いてたズボンも爆ぜる。

 そして、そこには赤いブーメランパンツを食い込ませた黒いセイウチみたいな生き物が横たわっていた。


「ああ、満腹だぁ。最高だぁ。ケイトーッ! スザンナーッ!」

 

 そして黒セイウチは喜色満面で腕立て伏せをし始めた。そして、僕たちを囲む群衆からは万雷の拍手。


「大道芸ちゃうわ!」


 僕の叫びは拍手にかき消された。カオス、ああカオスだ。訳わかんないわ。とっとと家に帰って寝たい。


 

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