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第八十話 荷物持ち攻める


「おい、勝利宣言はまだか?」


 アレフはレフェリーの方を向く。レフェリーは慌てて口を開く。


「あ、はい、戦闘不能により」


「誰が戦闘不能なんだ?」


 収納の中から出したエリクサーで一瞬にして傷を治し、僕は何事も無かったように立ち上がる。さっきのドラゴンブレスはあれで倒せたら儲けもの、目的は毒の無効化だ。毒や薬は熱で変質するものが多い。装備の加護でアレフは無傷だとしても、さすがに仕込んだ毒まではそれは及ばないと思ったがその通りだったみたいだ。仮定に仮定を重ねてたけど、上手くいって良かった。


「勇者様、お前の毒は熱に弱いみたいだな」


「そのようだな、あくまでも毒は保険、雑魚をふるいにかけるための」


 勇者が毒を使ってるという事を若干皮肉めかしたんだけど、全く響いてない。堂々と毒使ってる事認めてるし。


 アレフは構えると、踏み込んで僕に袈裟懸けに斬りかかる。それを大きくかわし距離をとり、ヘルハウンドのブレスをつるべ打ちする。


 ことごとく盾に吸い込まれる。


「ザップ、なんだそれは、ファイヤーボールか?さっきのファイヤーストームとエクストラヒール、魔法使いと神官の高位魔法を無詠唱で、お前はいったい何なんだ?」


「ザップ・グッドフェロー、荷物持ちだ」


 僕は返答と同時ハンマーでアレフを叩く。それを盾で防がれるが、アレフは大きく後退する。


「生意気な奴だ」


 アレフは剣を鞘に納めようとする。また毒を塗る気だ。時間がたったら再生成されるのか?


「させるか!」


 僕はヘルハウンドブレスの細かい連打で、アレフを牽制する。


「毒なんか使って勇者の名が泣くぞ」


「剣も武器、毒も武器、俺が使ったものが歴史を作る。毒はいい、無駄な時間と闘争を省ける」


「勝手な事を」


「けど、もういい」

 

 アレフは鞘を投げ捨てる。


「勇者の鎧、その全ての力を解放しろ」


 アレフの鎧が燐光を纏う。いやな予感がして、距離をとり、様子見に収納から出したミノタウロスの角を投げる。狙うは足、跳び上がって避けられる。


「もらった!」


 その無防備な着地に、ミノタウロスの角を出す投げる、出す投げる、出す投げる。


 ガン!ガン!ガン!


 鈍い音を立てて命中するが、鎧には傷一つつかない。


「こしゃくな」


 アレフは着地すると、矢のように飛び出し僕の前に立ち、上段から剣を振り下ろす。避けて返しにハンマーで一撃放つが盾に阻まれ、押し負け蹴り飛ばされる。すぐに立ち上がり、勇者に駆け寄り、体重をのせた渾身の一撃を放つ。盾に阻まれるが、アレフはたたらを踏み数歩下がる。


 おかしい、アレフが明らかにさっきより強くなっている。


「凄まじいな、荷物持ち。どれだけレベルを上げたんだ? もし、この装備が無かったら、俺は既に敗北している。強いな、強すぎる……」


 勇者は剣を正眼に構え、僕を見据える。


「けど、残念だったな!」


 勇者は口の端を歪め歯を剥き出し、凄絶な笑みを浮かべた。



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