講和
「じゃあな。とりあえず国に帰るよ。なあ、ザップ、うちの武器と防具だけでも安く売ってくれないか?」
マントを羽織った皇帝がしつこく絡んでくる。とっとと国に帰ればいいのに。その後ろには数人のこれまたマントの男たち。皇帝の連れていた黄金竜は彼の家臣を変身させたもので、今は人に戻っている。当然彼らも裸で、ジブルが証文片手に中古の帝国騎士の服を売っていた。因みにジブルは王国騎士にもアコギな商売をやっていた。まあ、魔道都市の国庫に入るみたいだから文句は言わないが。
「まあ、それについてはマイとジブルに相談してくれ。正直俺も今回の金勘定がどうなるかわからない」
「まあ、どっちにしても、大損だ。しばらくは大人しくするしかないか……」
皇帝は皇帝らしくなく肩を落とす。
「まあ、元はと言えばお前が攻めて来たからだろう」
「しょうが無いだろ。予言で数年以内に光の眷族の封印が解けるって言われてたからな。まあ、ものの見事に当たったけどな」
「けど、何とかなっただろ。無理矢理国を統一しなくてもみんなで助け合えばなんとかなるもんだろ」
「そうだな。王国、いやお前たちとは事を構えるつもりはもう無いが、どうにかしないとな。聖教国の奴らがどう動くかだよな」
聖教国。そういえば、予知では僕は多分聖教国の聖都で処刑されそうになった。光の眷族と聖教国は繋がってるのか? まあ、けど、何かされた訳じゃないからほたっとくしかないか。
「まあ、世話になったか、迷惑かけられたかわかんねーが、達者でな。帝国に来たら城に来いや。茶くらいは出してやる」
「おいおい、毒入りじゃないだろうな」
「そんな事するわけないだろ。俺は平和主義者なんだ。もしかしたら媚薬くらいは入っているかもしれんなー。ハッハッハッハ」
何が平和主義者だ。皇帝はクソつまらない冗談を言い残して僕たちに背を向けた。男の僕に媚薬なんか飲ませて何が楽しいんだ? むっ、奴はもしかしてそう言う趣味? 最後の最後で皇帝は僕を心底怯えさせた。絶対にアイツの城には行かないようにしよう。
王国騎士の偉い人が挨拶に来て、騎士団は去って行った。冒険者パーティー『地獄の愚者』を含む徴用された冒険者達もそれについていった。
残されたのは、僕たち一派と魔王リナ、アンジュ達少女冒険者4人、それと『みみずくの横ばい亭』メイド軍団。とりあえず馴染みの街に帰る事にした。空飛ぶ絨毯の小さな部屋くらいの広さに15人でぎゅうぎゅうに詰めて飛んで帰った。男はオブだけで、女の子達はかしましく、ご褒美なのか拷問なのか何とも言えない。まあ、何はともあれ仲間を失う事も無く帰る事が出来て重畳だ。
そのあと、『みみずくの横ばい亭』で、祝杯をあげて、いつのまにか酔っ払って眠ってしまっていた。
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