白い世界
白い世界。静寂の世界。大きなすり鉢状に凹んだ大地を覆い尽くす、まるで新雪に覆われたかのような美しい世界。
金色の鱗を失い、まるでヤモリのような肌色の素肌を晒す黄金竜だったものたち。鍛え上げられた体に纏うものなく蠢くむくつけき男たち。綺麗な世界に気持ち悪いものが蠢いている。
その中にぽつぽつある色彩は僕の収納の力を分け与えられた服を着た仲間たちだろう。僕はとりあえず、愛用のミノタウロスの腰巻きを腰と首に巻く。
「ザップ、こりゃまた派手にやっちゃったわね」
僕の横に佇む影。マイだ。チューブトップとショートパンツで器用に塩の上に立っている。少し残念だが、マイの裸が晒されるのは不本意なので複雑だ。その横には黒装束のピオンもいる。
「リナを助けてくれ」
「はーい」
マイはリナの方に駆け出す。そちらには、金のツインテールで首まで塩に潜っている少女。北の魔王リナ・アシュガルドが羞恥に震えている。ここで手を差し伸べとかないと、後で彼女は暴走しかねない。そうなったら、多分また破滅の予知をなぞる。そのリナの前には肌色の大トカゲ、神竜王ゴルドランが佇んでいる。多分、何が起こったのか解らずに呆けてるのだろう。奴の身を守っていた金剛の金の鱗が消えちまったんだからな。
「わ、私の武器と防具が……」
マイとおそろの服を着たリナがフラフラとこっちに来てごちる。
「俺は戦いを止めろと言ったはずだ。自己責任だからな。ここからは俺が仕切る。お前は大人しくここで見てろ」
僕はポータルを足場に塩から出る。そして空中まで上がり、大きく息を吸う。
「戦いは終わった。俺の勝ちだ文句がある奴はかかってこい。剣の錆にしてやる!」
大音声でのたまい、僕は収納から『絶剣山殺し』を取り出し、天に掲げる。
裸の男たちはわれ先にと僕から逃げ始める。肌色の黄金竜だったものも逃げ始めている。けど、その中にこっちを見ている巨大なもの。神竜王だ。
「お前らも、ここから下がれ。ケリをつけてくる」
「わかったわ。ザップ気を付けてね」
マイとピオンがうなだれてブツブツ言っているリナを引きずっていく。これで僕と神竜王だけだ。
『認めんぞ、こんな結末は認めんぞ!』
我に帰った神竜王がこちらを睥睨する。
「認めんと言っても、これが結果だ。お前は世界には勝てなかった。ただそれだけだ」
『認めん、認めん。ザップ・グッドフェロー。お前を倒す!』
塩をかき分け神竜王が迫る。横薙ぎに振るわれた腕を『山殺し』の腹で逸らす。
「しょうがない。力で証明してやる!」
僕は収納のポータルを四方に射出する。
「好きなだけかかってこい!」
そして『山殺し』を正眼に構える。
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