なぞる未来
「待って、ザップ、置いてかないで。どこに、どこに行くの?」
マイの駆ける足音が聞こえる。
「遠くへ行こう。けど、その前に野暮用を片付けないとな。大した事無い。すぐに終わるさ」
僕は立ち止まり振り返る。
「やっぱり、そう言うと思った……
ザップはザップだもんね。けど、あたしもついて行くわよ。どこまでもついていく」
そう言うと、マイの手には大きな刺付きの鉄球が現れる。僕のハンマー、ザップハンマーだ。マイはまるで、背景に花が咲きみだれるような笑顔で、ハンマーの柄を僕に差し出す。もっとも可愛い女の子が差し出すものにしては物騒すぎるな。マイがいつの間にか落としたハンマーを拾っててくれたのか。僕はしっかりとその柄を掴み、ハンマーを持ち上げる。
「じゃ、行くぞ、マイ!」
「はい!」
僕は振り返り、戦場と思しき方に駆け出す。僕に並んでマイも走ってくる。まじでどんだけ吹っ飛ばされたんだよ。普通だったら死んでるって。すこし、いや、かなり、リナと神竜王に腹が立ってきた。奴らにはきっついお灸をすえてやる。
僕とマイは走り、途中で絨毯に乗ったラパンとピオンと合流し、ノノとオブを拾って戦場に戻った。この間は、マイが収納の拡張スキルのスマホを使ったりして、5分も経ってないと思う。一度絨毯を浮上させて戦場を俯瞰する。でっかい竜と戦う金色の豆粒。神竜王とリナを中心に黄金竜と人間が入り乱れている。
おいおい、竜相手に騎士も戦ってるが、大丈夫なのか? ブレス食らったら一撃だろ。けど、そばに寄ってそれは杞憂だと気付く。一体のドラゴンがブレスを吐くが、それは途中で消え失せる。あ、そうか、僕の仲間達も戦ってるんだ。ブレスを収納にしまってるのだろう。
黄金竜と騎士達は一進一退の攻防を繰り広げているが、リナと神竜王はどうもリナが押して居るように見える。いかん、これって、予知をなぞり始めてるんじゃ? あんまり神竜王を追い詰めたら、爆発するんだよな。
「ラパン、俺を中央に降ろせ」
「はーい、了解」
絨毯の結界を解除してもらい、僕は戦場の中央に飛び降りる。今度は、マイとピオンもついてくる。そして、リナ達のそばに着地する。
「戦いを止めろーーーっ!」
僕は叫ぶが、聞こえちゃいない。かくなる上はあれしかない。本当はあんまりやりたくないが、これしか戦いを止める方法はないだろう。
僕は収納から、パンパンに魔力がつまった『吸魔の珠』を取り出した。