第七十九話 荷物持ち決闘する
「勇者アレフ! ポルティングス・フォン・ラギスプリングス王子の名代として、ザップ・グッドフェローが貴様を倒す!」
僕は使い慣れたミノタウロスのハンマーを天に突き上げる。王族の代理ということで、一応騎士っぽい格好を僕はしている。チェインメイルの上に胸当て肩当て、小手と脚絆に鉄靴。動きやすさ重視で見た目程重くない。
それにしても、ポルトの正式名称は言いにくい。この名乗りの為に結構練習した。
「荷物持ち、貴様は所詮荷物持ちと言うことを教えてやる。この勇者アレフ・ラヴクラフトがな!」
金髪を風になびかせて、煌びやかな全身鎧に左手に盾を持っている。勇者は音を立てずに剣を抜き天を突く。辺りに割れんばかりの声援が轟く。
今僕らがいるのは公営のコロシアム。僕の後ろの控えにはポルト、アレフの後ろの控えには第一王子がひな壇の上にある椅子に座っている。ポルトの傍らにはマイとアン、第一王子のそばには冒険者パーティー『ゴールデンウインド』のメンバーがいる。
数万人収容出来るその客席は満席で、外にも人が溢れているらしい。
実質、次の王位継承者を決めると言う事と、アレフの知名度、それとドラゴンを街の外に追い払った僕の知名度によるものらしい。
少し面映ゆい。ドラゴンの事は完全に八百長だからな。
この決闘の決着はどちらかの戦闘不能かギブアップのみ。完全なデスマッチだ。
客席と闘場の間には、国の魔法使いたちの張った結界があるそうなので、どんな攻撃をしても大丈夫だそうだ。
「それでは、決闘を」
レフェリーの開始の合図を聞く前に僕は大きく後ろに下がる。
「開始する」
ゴォオオオオオオオーッ!
開始一番、僕は右手をアレフに突き出し、ドラゴンのブレスを数本まとめたものを叩き込む。
アレフは炎の濁流にのまれ、炎はその後ろの結界にぶつかり消滅してる。それでも、そのそばにいた者は第一王子も含め逃げ出した。それでも僕はさらにブレスを出し続ける。
ピシリッ!
結界から音がしてヒビが入る。これ以上は結界がもたなさそうなので、ブレスを止める。
炎が消えると、そこには煙をあげて佇む勇者アレフ。
何っ、全くの無傷だ。ひょっとしたらこれで終わったかと思ったのに。
「熱かったが、耐えれない事はない。俺の勇者の盾はほとんど全ての攻撃を防ぐ!」
おいおい、ドラゴンのブレスだぞ。普通、熱かったで済ませられるもんじゃない。アレフをいやアレフの装備の力を見くびってたみたいだ。
アレフの剣がまばゆいばかりに光る。咄嗟にハンマーを両手で握る。
次の瞬間、僕の胸に痛みがはしり、僕に剣を突き立てた勇者アレフが目に映る。剣が柄まで僕に埋まっている。
「ガハァ……」
僕は吐血する。しかし目的は成功だ!
アレフは僕を足げにして、剣を引き抜く。
僕はその場に崩れ落ちる。