魔王対魔王
「お前の力見せてみろっ!」
魔王リナは僕の方に向かって飛んでくる。
『なぜ、お前が私を守る?』
神竜王の声が頭に響く。
「神竜王、お前の相手は後だ。大人しくしててくれ」
僕は言い放つと、『絶剣山殺し』を収納にしまい、愛用のザップ・ハンマーを手にする。飛んで来たリナの上段からの切り下ろしを剣の腹を弾いて逸らす。おいおい、今のやばかったぞ。本気で払わないと脳天から真っ二つにされる所だった。手加減全くなしだ。僕は足場にしてるポータルを蹴って後ろに飛び距離をとり、また出したポータルに着地する。
「おい、リナ、待て、話を聞け!」
「ザップ、お前と話す事など何も無い。妾に言うことを聞かせたいなら力尽くでこい!」
力尽く……また何か紛らわしい言葉つかいやがって。むむ、何て言えばいいんだ。何を言っても墓穴を掘りそうだ。
「ていやぁ!」
まるで重力の抵抗を感じさせずに、リナが飛来して大剣で水平に薙ぐ。足場のポータルを消して、落下しつつかわすが、そのまま回転したリナが軌道を変えて袈裟がけに斬りつけてくる。それを寸手の所で出したポータルを蹴ってかわす。大きく距離をとるが、これは不利だ。
リナは自由自在に宙を駆け巡るのに対して、僕は足場にポータルを出して、それに着地したり蹴ったりして空中移動している。このままだとかわすだけで手一杯で、全く攻撃出来ない。しかも、今までは運良くかわせているが、多分まだリナは本気では無い。本気になったら、かわし続ける自信は無い。
「待てっ、リナ、話を聞いてくれ!」
「問答無用っ!」
リナは嬉々として大剣を振るい続ける。なんとかかわし続ける。クソッ、奴は完全に戦いを楽しんでやがる。
世界魔法『太古の世界』をぶっぱなすか?
いや、それは不味い。もし、上手くやれたとしても、ここでリナを裸にひん剥いちまったら、後で、僕はマイに誅殺されてしまうだろう。それに、神竜王を倒す秘策をここで見せるべきではない。
ここで見せるべきではない?
僕の頭に何かが閃く。それは人としては最悪手だ。けど、これは戦い。生き残るために、全てをこの手からこぼさないためには僕は悪魔にでもなってやる。あの悲しみを繰り返さないために!
そうだ、よく見ると、たまにチラチラとリナが僕から視線を逸らす瞬間がある。それは僕が大きな動きをして腰巻きが捲れている時だ。躊躇うな! やってやる!
「リナ、俺の言う事を聞け!」
僕は大音声を上げ、腰巻きを収納にしまう! さっきもした事だ。恥ずかしさは無い!
「キャアアアアアーッ!」
リナは両手で顔を覆うと、そのままゆっくりと降下し始めた。魔王といえども、所詮小娘だな。
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