魔王降臨
「ラパン、操縦を変われ。そして中央に降ろせ!」
「うわっとと」
僕が投げた操縦のワンドをラパンが辛うじて受け取る。僕は投擲が不得手なのを忘れていた。ラパンが前に来て座っては操縦し始める。絨毯は急降下する。
「結界を解いてくれ。みんな体を低くしろ」
「了解!」
絨毯の結界が消えて、風が殴りつけてくる。僕は立ち上がり、高度を確認する。
「王国騎士団と合流しろ。俺は出る!」
言うなり僕は飛び降りる。真下に降りたはずなのに慣性に流される。高速飛行するものから飛び降りるのは初めてなのでしょうが無い。空中で服を収納にしまい、馴染みのミノタウロスの腰巻きを首と腰に巻く。これからのショータイムのための小道具だ。悲しい事にあの格好じゃないと僕はザップだと認識されない事が多いからな。
着地し、踏ん張りなんとか転倒を免れる。ここでゴロゴロ転がって行ったら、かっこ悪いことこの上ない。そして、大きく息を吸い込む。
「我が名は、猿人間魔王『ザップ・グッドフェロー』! この戦は我が預かった。双方戈を収めてこの場を去れ。異がある者は我が相手してやる!」
大音声でのたまり、収納から絶剣『山殺し』を出し、片手で頭上に振り上げる。刀身が30メートルを超える化け物剣が空を切りさき、大きな音がする。
そして、辺りを静寂が支配する。決まったな。何て言って登場しようかと考えたけど、時間が無くてアドリブで走ったけど、いいセリフだったのでは?
けど、すぐにその静寂は僕の言葉によるものでは無いと気付く。目の前を風に流されていく見覚えのあるぼろ布。あ、あれ僕の腰巻きだわ……
急いでそれを引っ掴み腰に巻く。くそぅ、格好よく魔王降臨の宣言はずが、ただの露出狂の戯言になっちまった。まあ、けど、圧倒するという当初の目標だけはクリア出来たはずだ。その証拠に神竜王たちも王国騎士団も動きが止まっている。
目の端にキラリと輝くものが映る。金色で陽光を照り返しながら、何かが高速でこちらに飛来する。あれは金色の北の魔王リナ・アシュガルドだ! 良かった、奴がもっと速く到着してたら、全裸の僕と鉢合わせしていた。リナはシュタッと、僕の前に軽やかに着地する。地面に突き刺さるようにやって来た僕とは大違いだ。
「ん、ザップ、何してるんだ? それはそうと」
リナは神竜王の方を向く。そして、その口が開く。