到着
「群れ寄る天使と聖騎士を壊滅させて、ザップは立ちすくむ。『これから僕はどうすればいいのだろうか?』 ザップはそう言うと途方にくれた。そして、悪夢から覚めて、ノノが消えた瞬間に戻ってきた」
ラパンはそう言うと大きく息をつく。みんなをノノが起こしたあと、ラパンが事の次第を話し始めた。
何だ、これは何の罰ゲームなのか? 何が悲しくて自分が主役の大スペクタクル活劇を聞かなきゃならんのだ? 所々、誇張されていて、正直こっぱずかしい。僕は顔が熱い。真っ赤になってるんじゃないか?
「ザップ、可哀相。みんな死んじゃったのね……その中を1人で悲しみを背負って戦ってたのね……」
チラ見すると、マイがハンカチを目頭に当てている。チラ見なのは、真っ赤になってる僕を見られたくないからだ。マイは、なんか悲しい物語と勘違いしてるみたいだけど、これは僕が体験した予知の世界なんですけど。
「えー、アタシとピオンって、まるでモブみたいに天使の一撃で死んでしまってるんですけどー。もうちょっとヒロインとしてクローズアップして欲しいんですけどー。シナリオ変更してほしいわ!」
ミネアがラパンに噛み付く。ミネアはこれが少女冒険者4人のうちの1人の魔法使いのルルが書いた、僕が主人公の小説と勘違いしてるんじゃないか? シナリオも何もドキュメンタリーなんだがな。
次はオブが話し始めた。
「そうですね。なんて言うか、最近巷では、こういう風な全滅系の人気小説とかがあったりしますけど。読み終わったときは胸クソですよね。やっぱ、物語はハッピーエンドじゃないとですね。それに暗黒竜王オブシワンである僕がさっくりモブ死にって言うのもいただけませんね。多分、間違いなく、その物語の僕は地面に潜って隠れてますよ。その程度では僕は死なないですね。そのあとザップと合流して混沌を引き起こしたんでしょうね」
なんか元破壊王が好きな事言ってるが、僕も共感する。経路を見るとしばらく直進だ。今ならオートで行ける。絨毯を自動操縦にして、僕は振り返る。
「サッドエンドなんてクソ共食らえだ。俺はこれからさっき拾えなかったものを全て拾ってやる。そのためにみんなも力を貸してくれ」
「「「はい!」」」
みんな首を縦に振る。僕は1人1人の顔を見て、また操縦に戻る。そのためにも急がないとな。
「多分、その天使は、天軍の一部ね。昔、古竜がその力で異界に封印したって言われているわ。その鍵が古竜の竜神器だったって訳ね」
ノノが言ってるのは、神竜王を倒した時にわらわらと現れた奴らの事だな。天軍って何だ?
「そうですね。僕とゴルドランが封印しました。その通り鍵は竜神器です。ちなみに僕の竜神器はザップにやられた時に粉々になってます」
ん、という事は、封印をぶっ壊したのは僕? 天使達が現れたのは僕のせいなのか。神竜王の暴走を止めて、しかも倒したらいけない。どうすればいいんだ?
答えが見つからないまま、到着する。眼下には王国騎士団と思われる軍団とそれと対峙する巨大な金竜と数体の金竜。どうにか飛ばしたかいあって、間に合ったようだ。