リスタート
「暴走した神竜王によって、王国軍は全滅、『地獄の愚者』の4人とシャリーが死んでいた……」
僕は語りながらあの時の状況を思い出す。そうだ、時間が無い。こんな悠長に話なんかしてる場合じゃないんだ!
確か封印解除がきっかけで北の魔王リナが王国軍に合流したってシャリーが言ってたな。あの時、王国騎士たちの死体はまだ新しかった。今現在は塔を出てまだすぐのはず。急げば間に合うかも。あの時、ノノが消えたあと、しばらくマイ達が寝てるのを起こして説明してとかで結構時間を取られたし、ラパンは直接戦闘区域に向かったんじゃなく、国境から街道を下って行った。そのタイムロスをカットしたら間に合うはず。
「『地獄の愚者』とシャリーって誰?」
ノノは首を傾げて僕に問いかける。
「え、何ソレ、王国軍が全滅? レリーフ達とシャリーが死んでる? 何ソレ、嘘だろ?」
ラパンは操縦のワンドを手に振り返る。脇見運転止めようね。ってかこれは僕が操縦した方が速いはず。
「ラパン、貰うぞ」
僕は操縦のワンドをラパンから奪って集中する。眼下の景色。ここの地形は解る。やはり、大回りしている。方向転換し、戦闘区域へと一直線に進む。そして、収納からポータルを前面と後面に射出し、前から吸った空気を後ろから出す事で更に加速する。あと、収納の中のものをカテゴライズしていく。『吸魔の珠』に魔力を吸われていいものと悪いものを、その両者が触れ合わないように。さすがに魔法の品が『吸魔の珠』に干からびさせられたら戦力の幅が減る。絨毯の外で吸って吐いてる空気は珠の方を通して珠の魔力補充にも使う。
「ザップ、どうしたんだ?」
ラパンが僕の袖をクイクイする。
「時間が無いんだ」
「だけど、何があったか説明してくれないと対策の立てようがないわ。ザップが見た未来をまたなぞるかもしれないわよ」
後ろからノノの声がする。それもそうだけど、それよりも、神竜王の大殺戮をどうにかして止めたい。
「なら、僕に任せて。ザップとは魂の一部分で繋がっているから、失敗はしないはず。ザップ、心を穏やかにして」
ラパンの手が僕の手に触れる。え、何だ? 何するんだ? 滔々と歌うようにラパンが聞いた事がない言葉を紡ぎ出す。
「ほう、精神系の魔法か。しかも練度が高いな」
ノノの声がする。けど、僕は絨毯の操縦と位置確認で手一杯だ。
「リード・マインド」
ラパンが触れてる手が熱を持つ。軽く頭痛がするがすぐに治まる。しばらくラパンは僕の手を握りしめ、そして離した。
「うげぇ、何ソレ。みんな死んでしまった。ザップ、記憶を同調させてもらったよ。僕からみんなに説明するね」
「おい、勝手な事するなよ」
まじか、あれを全部まるっと見られたのか? まあ、ラパンだからしょうが無いが少し恥ずかしい。
雑念を振り払い、更に絨毯を加速させる。
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