表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

783/2100

 悪夢


『時間が無いわ。ザップ、お前はこれから起こる事をしっかり心に刻みなさい。私が言えるのはここまで。下手な知識は身を滅ぼしかねないわ。足搔いて、足搔いて、大事なものを掴み取りなさい。何が起こっても心を強く持ちなさい。もう時間ね。さよなら、ザップ……』


 立ちすくむ僕の頭に響く声。これはノノだ。遠いような、近いような所から聞こえる声。少しめまいがしたと思ったら、目の前に耳が尖ったぽっちゃりの少女。


「お帰り、ザップ」


 ノノはにっこり微笑む。


「ノノーーーーッ……」


 僕は我慢出来ずにノノに抱きつく。ブヨブヨだけど暖かい。僕の目から熱いものが溢れ出す。格好悪いけど、関係無い。


「もうっ、泣き虫さんね。けど、今だけは勘弁してあげる。けど、あんたのようなサイコパスがガン泣きするなんて、未来はやっぱり悲惨なのねー」


 未来? 悲惨? 何言ってるんだ。て言うかここはどこだ? お尻のしたは絨毯? あ、ラパン? 確か天使の矢で死んだはずじゃ? え、マイとピオンとオブとミネア? みんな横になってる。


「痛い、痛いって。ザップ、放しなさい! 」


 ノノが悲鳴を上げて僕はつい離す。マイに近づく。その胸は規則正しく上下している。息してる。生きてる!


「どうしたんだよ。ザップ。泣いたかと思ったら、マイの胸を見て。え、もしかして、かんの虫ってヤツ? まだ母乳が恋しいの? それとも、寝てるマイさんに悪戯する気なの?」


 ラパンがこっちをジト目で見ている。


「何言ってやがる。マイが生きてるか確認してたんだ。何だ? 俺は夢を見てるのか?」


 僕はどうにかマイに抱きつきたいのを我慢する。正直、夢でもいいからマイを力いっぱい抱き締めたい。


「やっぱり混乱してるみたいね。ザップ、これは夢ではないわ。あんたが今まで見てたのが夢のようなものよ」


 ノノが絨毯の上をにじり寄ってくる。


「どういう事だ?」


「神聖魔法に、『予知プレコグニション』というものがあるわ。未来の断片を感知するものだけど、その魔法を凝縮して昇華させた魔法が『精密な世界アキュレート・ワールド』。対象者にこれから起こる事を精密に体験させる事が出来る魔法よ」


「これから起こる事? という事は、さっき俺が体験した事は、幻なのか?」


「そうでもあるけど、このまま同じ事をしたらそうなる確立が高い未来よ。まあ、代償は高くついたけど」


「なんで、最初っから言ってくれなかったんだ?」


「現実じゃないって知ってたら、普段通りに行動しないでしょ。そしたらそれが予知を歪めるかもしれないから」


「そうなのか……それで、なんで、俺に?」


「あたし、妖精王と呼ばれた者の封印解除、暗黒竜王オブシワンと神竜王ゴルドランの復活。あんたは全部に絡んでいる。多分、あんたがこれからの行く末の鍵を握ってると思ったからよ。それで、何を見て、何を体験したの?」


 ノノは目を細めて僕に詰め寄ってくる。


 僕は大きく深呼吸して、今までの事を話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ