レクイエム(5)
「太古の世界」
今僕は、スキルを使えないように様々な封印でがんじがらめ縛られている。けど、世界は世界。世界は絶対だ。世界を封じられるものは世界しか無い。マインドゼロのギリギリまでMPを使ったこの魔法は今までよりも範囲が広く、広場を包み込むくらいだった。怨嗟の力が僕の魔法をより強くしたのではないだろうか。
もう、この世界には僕の大切なものは何もない。けど、これを引き起こした者には相応の鉄槌をくらわせてやる。極上の絶望と恐怖に震えさせてやる。いままで逃げ出す機会は沢山あったけど、親玉を見つける事が出来なかった。今回の僕の処刑にあたりノコノコとその馬鹿面をさらけ出したのが運の尽きだ。
ボクにギリギリまで迫ったギロチンの刃も白い光に包まれる。そして落ちてきたのは塩の粉。頸木も全て塩と化す。
僕を中止にすり鉢状に地面が抉れる。僕は一糸まとわず塩の大地に着地すると、裸の人々が蠢く地獄絵図の大地の奥に目標を見つける。愛用のハンマーと腰巻きとマントを身に着け大地を蹴る。そして、驚愕の表情を浮かべた羽根が生えた者の首魁に無慈悲な一撃を叩き込む。
終わった。
いや、始まりか?
まずは、この羽根が生えたクソのような生き物達を殲滅し、それに与した者達にも鉄槌を食らわしてやる。
僕の大事なものはもう何も無い。
ああ、世界はなんて残酷なのだろうか。
そして、それよりも残酷なものに僕はなる。
2度と大事なものを失わないように。
空から羽根が生えたクソ共が現れる。
僕は収納から漆黒の戦槌を取り出す。それから溢れ出た瘴気は辺り一面を席巻し、それに触れた羽根が生えた奴らはボトボトと落ちてくる。
さあ、祭りの始まりだ。命というものを刈り取る収穫祭の始まりだ。
僕は右手にザップハンマー、左手に瘴気の金槌を手に悠々と歩を進めた。
羽根が生えた生き物、どうやら天使という糞虫らしい、をまるで芋虫を踏み潰すように肉塊に変えていく。こんな奴らにマイが……僕の視界が朱に染まる。返り血なのか僕の血涙なのかは解らない。そして、わらわらと現れる聖騎士と呼ばれるクソ共にも同じ運命を辿らせてやる。
「神の名の下に」
なんかクソみたいな事を言っているが、お前らが奉じている神は間違いなく邪神だ。無抵抗な者を一方的に殺戮した邪神だ。マイ、ラパン、ミネア、ピオン、オブがお前らの神に何かしたのか?
僕は更に怒りに火を付け、一切合切情け容赦なく叩き潰していく。当然こちらに攻撃してくる者のみだ。
どれだけ戦い続けたのだろうか? 僕に向かって来る者は居なくなった。
「これから僕はどうすればいいのだろうか?」
つい独りごちる。
当然、答えてくれる者は誰も居ない……