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 レクイエム(4)


「アダマックス!」


 僕はハンマーを出して不毀化の魔法を発動させる。先程焼滅してしまったけど、『吸魔の珠』のおかげでMPは温存されている。ハンマーが銀色から鈍色に変わる。けど、その前に、収納の中のアダマックスの鱗を放つ。それは神竜王にドカドカ突き刺さる。


「くたばれーっ!」


 僕は跳び上がり最大限の攻撃を神竜王に叩きつける。前回は受け止められたが、今回は奴の鱗は無い。簡単にその頭を叩き潰す。けど、黒竜王みたいに馬鹿げた回復能力があるかもしれない。僕は狂ったかのように神竜王にハンマーを叩きつけ続ける。脆いな、牛肉を叩いているくらいしか抵抗が無い。けど、僕は叩き続ける。コイツはやりすぎた。僕の仲間を何人殺しやがった? 何が平和のためだ、何が世界のためだ。僕の大切なものが無い世界なんてクソ食らえだ。僕のMPが見る見る減っていくのを感じる。そして、ギリギリでアダマックスを解除する。目の前には巨大な肉片があるだけだ。


「ザップ、終わったの?」


 マイが僕に追いついて来た。けど、今は僕は何も言いたく無い。アン、ジブル、アンジュ達……


 目の前の神竜王だった肉片がひときわ光を放ち、消え失せる。そしてそこには、1人の傷だらけの男と、折れた一本の金色のランス。

 いや、終わって無い。明らかに空気がおかしい。

 なんだ、気が付くと、空が金色だ。そして、空の端の方に何かが見える。門? 金色に輝く門が空の端に現れる。そしてその門が開き、中から無数の羽が生えた人みたいなものが現れる。そして、それらはこちらに向かって来る。何だあれは?


 僕が呆けていると、見る見る羽根が生えた人々はこちらに向かって来る。けど、もう僕の体は動かない。さっきの魔法と攻撃で全てを使ってしまった。


「ザーップ!」


 マイが僕の上に覆い被さって来る。辺り一面が光に包まれる。何だ? 何が起こった?

 羽根が生えた生き物達からのべつ幕無し光の矢が振り注いでいる。それらは辺りの大地を穿ち、僕に覆い被さるマイにも振り注いだ。収納からエリクサーを出してマイにかけるが、その傷は癒えない。しかもマイを貫通した矢が僕も貫きそこが痺れる。僕に温かいマイの血が降り注ぐ。僕は収納のポータルを全面に展開し、マイを収納に入れて駆け出した。そして、羽根が生えた生き物を蹂躙しはじめた。仲間は誰も居ない。1人だけの戦いが始まった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「魔王ザップ。この世界に混乱を巻き起こした者として断罪する」


 僕は今、断頭台にいる。かなりの羽根が生えた生き物を道連れにしたが、無限にアイツらは湧き続けた。多勢に無勢。アイツらの放つ矢には痺れる効果もあり、ついには摑まった。そして、今は何処か知らない国の広場に連れている。大きな教会が見えるから、多分聖教国の首都ではないだろうか? 広場には大勢の群衆が集まり、僕の処刑を楽しみにしている。奥の方の高台に、絢爛な衣装の人物と、羽根が生えた煌めく鎧の人物を確認した。多分羽根が生えた奴が門から現れた羽根が生えた奴の親玉だろう。


「何か言い残す事はないか?」


 壇上に上がってきた神官が僕に話しかけてくる。辞世の句的なものを考えるけど、気の利いた言葉は思い浮かばない。


「クソ食らえだ!」


「やはり魔王、救いようがないですね。あなたにも救いがあらん事を」


 神官は立ち去り、処刑執行人がギロチンの刃を支えている紐を切る。そして、その特別製のギロチンの刃が僕の首に落ちてきた……

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