レクイエム(3)
「私たちは、神竜王とは直接戦闘はさけつつも上手く誘導して一進一退の攻防を繰り広げてたわ。均衡が崩れたのは魔王リナが現れてから。彼女は『封印は解かれた。不戦の約定は反故だ』って言ってた。魔王リナは神竜王の眷族をなぎ倒しながら、暴れ回って神竜王を追い詰めていったわ。私たちもそれに追従して、あと一歩で神竜王を倒せると思ったとき、神竜王が爆発した。それに巻き込まれて、リナも含めほぼ全ての者は死に絶えた。生き残った者達はまだ戦ってるわ。ザップ、あとは任せたわよ」
そう言うと、シャリーの亡霊は消え失せた。え、リナもシャリーも死んだ? 僕はその事実を受け入れられず、立ちすくむ。
パシーーン!
僕の頬に痛みが走る。
「ザップ、呆けないで! まだ終わって無い。行くわよ」
僕はマイに頬をはたかれて正気に戻る。そうだ、まだ生き残っている者が戦っているって、シャリーは言っていた。急がないと。
僕はハンマーを手に走り出す。柔らかいものを踏みつけたりしながら。死者には悪いが時間が無い。しばらく走ると遠目に小山のようなものが3つ見える。黒っぽいものが2つと黄金色のものが1つ。アンとヒドラジブルと神竜王だろう。みるみる近づき、それが正しかったと気付く。神竜王にドラゴンのアンとヒドラジブル、それに4つの小さい影が果敢に攻撃している。小さい影はアンジュ達少女冒険者4人だ。なんとか間に合った。あと少しでエンゲージだ。神竜王が急に光り始める。何だ? 気にせず僕は走り近づく。
「グゥオオオオオオーッ」
神竜王の咆哮が辺りを震わせる。そう思ったや否や僕は全身を強かに打ち付けられてふっとばされる。何が起こったのか解らない。けど、全身にエリクサーを振りかけて、すぐに立ち上がる。そこで見たのは、首がないドラゴンのアンと、蠢く肉塊になったヒドラジブルと吹っ飛ばされた4人の少女。少女達はピクリとも動かない。間に合わなかった……
「ウアアアアアアアーッ」
僕は訳もなく叫ぶ。許さない。アイツは許さない。ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す!
怒りで視界が朱に染まる。涙に血が混じってるのか。
僕は神竜王を見る。その目は怒りに血走り、知性を全く感じさせない。クソがっ! けものヤローは狩るのみだ。
神竜王の体は刺のついた鱗におおわれている。ほぅ、それが、暴走形態なのか。関係ないな。僕は収納の中にハンマーをしまって『吸魔の珠』を取り出して掴む。食らわせてやるよ、世界って奴を!
「来やがれ! 『太古の世界』!」
僕は神竜王に近づきながら魔法を解放する。白い光りがほとばしり僕の周り全てを包み込む。そして、光が弾け、消え去った時には、そこに残っていたのは、肌色の大トカゲと全裸な僕だけだった。
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