優しく最悪な魔法
「なぁ、お前はどんな魔法が使えるんだ?」
心地よい絨毯の上、気を抜いたら僕も眠ってしまいそうだ。まあ、寝てもいいとは思うのだが、誰か1人はこの子豚、ノノを監視しとかないと、また何かしでかしそうだ。それで何となくノノに話しかけた。
「いろいろよ」
「いろいろじゃ訳分かんねーよ。具体的に教えてくれないか」
「まあ、そうね、1番得意な魔法が『暴食者』ね」
「それって、オブを太らせた魔法だろ、俺が知ってる限りでは聞いた事無い魔法だな」
「それはそうよ、あたしが生み出したオリジナルの魔法だから」
ん、生み出した? それって凄い事じゃないのか?
「なんで、そんな魔法生み出したんだ?」
「そうね、もともとは、魔法を使って食べ物を作ろうとしてたのよ。けど、それはまだ上手くいかないわ。多分何かの因子がまだ足りてないわ。ねぇ、なんでこの世界では争いが絶えないと思う?」
なんだ、唐突に。ノノが遠い目をして僕を見る。僕を見ているが、その目が見ているのは僕では無いようだ。なんだかな、ここは真面目に答えないと。
「色々あると思うけど、正直俺には解らないな」
「食べ物よ、食べ物が足りてないから、みんな争うと思うの。それが全てとは言わないけど、魔法で食べ物を生み出して、この世に飢えが無くなったなら、争いはかなり減ると思うの。毎日美味しいものでお腹いっぱいな幸せな気分になったら、争いなんて馬鹿げたものは無くなると思うわ。少なくとも、あたしは戦ってるより美味しいもの食べてる方がいいわ。ザップ、だからお前はあたしに美味しいものを沢山食べさせるのよ」
そう言うと、ノノは僕に向かって輝くような笑顔を向ける。まるで、パッと花が咲いたような感じだ。僕は思わず、その不意打ちに少しドキッとしてしまう。よくよく見ると、ぽっちゃりに目がいってしまうが、ノノはかなり可愛い。さすがエルフと言った所か。太ってるのが残念だ。
「あたしの『暴食者』は、対象者に栄養を与える事はできるけど、とっても魔法効率が悪いのよ、簡単に言うとMP消費が高すぎるの。それがなければ、もっと沢山の人を幸せにする事ができるのに……」
ん、その魔法で幸せ? それってぽっちゃりを大量生産する事か?
「あたしの夢は、みんなが幸せでふくよかになる世界。いつか叶えてみたいわ」
こ、こいつはやはり、危険だ。この世がぽっちゃりばっかになったら、僕は正気で居られる自身がない。ついつい太ったマイやアンを想像する。じ、地獄だ……
「他には何か使えないのか? お前は何か『世界魔法』は使えないのか?」
無理矢理話を逸らす事にした。もうぽっちゃりの話はお腹いっぱいだ。
「あ、忘れてたわ。『精密な世界』」
ノノの体が光り輝く。なにっ、コイツ、いきなりぶっ放しやがった。そして、光が僕を包み込む。光を収納に入れようとするが、全く効果がない。クソッ、コイツを甘く見過ぎていた。
そして、辺りは白い光に包み込まれた。
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