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 乱入SS『桜桜』


「光よ!」


 導師ジブルの手から現れた光がフヨフヨと上昇していき、桜の木の真上で止まる。今までは月明かりだけで、色が薄かった桜の花が桃色に映える。


「綺麗ね」


「そうだな」


 マイの言葉に僕は頷く。フワフワとした桜の花はまるで大粒の雪のようにも見える。なんか、何と言えばいいのか、じっと見つめていたくなる美しさが桜の花にはある。

 僕たちが今いるのは、王都の公園で、昔、東の国から送られたと言われる桜の木が沢山ある。春にはそれらが花を咲かせ、東方に習った花見という桜の花を見ながらご飯を食べお酒を飲む宴会が至る所で開かれる。僕らもそれを楽しもうと思い、1番人が少なくなるという、今日、月曜日の夜に決行した。それでも人が多かったので、外灯が少ない端の方で『花見』を楽しむ事にした。今回は内輪だけのプチ宴会で、後日知り合いを沢山誘っての『大花見大会』もする予定だ。

 今日のメンバーは、僕とマイとアンとジブル。一緒に生活しているメンバーだ。公園の芝生の上に布を敷いて靴を脱いで座っている。東方でのしきたりらしい。東方に詳しいエルフのデルに教えてはもらった。

 

「私、この花、生まれて初めて見た気がします」


 いつもは食い気ばっかのアンでさえ桜の花に見惚れている。


「この花を見ながらのご飯ってとっても美味しそうですね」


 やっぱりいつも通りだ。けど、それには同感だな。この桜の花を見ながら飲むお酒は絶品に違いない。今まで『花見』という風習は知っていたけど、生きていくだけでやっとだったので、僕も『花見』は初めてだ。


「キャハハハッ」


 少し離れた所で宴会している女の子たちの笑い声が聞こえてくる。王都は治安がいいな。夜女の子だけでも宴会できるんだな。他に宴会してる所からも、笑い声や歌声などが聞こえてくる。平和だな。


「ニャーオ」


 見るとマイの所に猫ちゃんが来ている。多分連日の花見で猫ちゃんに餌あげたりする人もいるのだろう。マイが猫ちゃんの喉をグルグルしている。羨ましくて僕も触ろうと近づくがすぐに逃げられる。残念。そういえば、最近、猫のモフちゃん見てないな。今度会ったら、心置きなくモフモフする事にしよう。


「それでは、美しい桜の花にかんぱーい!」


 僕が音頭を取ってジョッキをぶつけ合う。今日はなんとエール2杯まで許可がおりている。グビッと1飲みして、マイが作ってもくれた特製串焼きを口にする。


 おおおおおおおーーっ!


 心の中で歓喜の叫びを上げる。これは最高だ。美しい花を愛でながら、キンキンに冷えたエールを口にする。これは止められない。沢山の人たちが虜になる訳だ。なんか心の底から喜びがこみ上げる。しばらく僕たちは料理とお酒をいただいた。


 1陣の風が吹き、ヒラヒラと桜の花びらが舞う。


「うわ、なんか勿体ないけど、花びらが舞うのって綺麗だね」


 マイが感極まって立ちあがる。ヒラヒラ舞い散る桜の花びらの中に立つマイはまるで桜の妖精のようだ。僕はしばし言葉を失う。

 ひとひらの花びらがジブルのジョッキの中に落ちる。けど、意に介さずジブルはそのままエールを飲む。風雅なのかなんとも言えない感じだな。


「ジブル、今、花びら飲みましたよね?」


 アンが驚いてる。


「ん、飲んだわよ。桜の花って食べられるのよ」


「え、そうなんですか?」


 そう言ったアンの動きは迅速だった。立ち上がって彼女の背丈くらいの高さで咲いてる桜の花をパクリと口に含む。なんて奴だ。僕は桜の花に噛みつく人を見るのは初めてだ。正直ドン引きだ。


「旨かったか?」


「草、強いて言えば水菜みたいでした。少し苦いです」


「じゃ、食べるの止めような。見るだけにしとけ」


「はい!」


 そして僕たちの『花見』は続いていった。ドラゴンはまた1つ賢くなったはずだ。

読んでいただきありがとうございます。


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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