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 空の上で


「お前にこのタマタマをあげるわ」


 唐突にノノが僕に子供の拳くらいの大きさの玉を差し出す。真っ黒い玉で心なしかその周りに黒いモヤがかかっているように見える。コイツにとって丸いものは全てタマタマって名前なのか? ピオンの教育がまだ足りてないんじゃないのだろうか?


「いらん」


 何、偉そうな事言ってやがる。コイツが差し出す気持ち悪いオーブをなんで貰わにゃいかんのだ。絶対呪い系のアイテムに違いない。


 僕たちは今は雲の上だ。魔法の絨毯で国境付近を目指し、遥か上空を飛んでいる。ラパンが集中しながら絨毯を操縦していて、ミネアとオブはまるで死骸のように、ピオンは鞘に入った小剣を手に座ったまま眠っている。マイさえもこっくらこっくら船を漕いでいる。風はそよ風、ぽかぽかで暖かく、絨毯は極上に心地いい。みんなが眠ってしまうのは当然だと思う。僕も気を抜いたら眠ってしまいそうだ。


「ものの価値が解らないやつね。せっかくこれから世話になるから、お金の代わりにって思ったけど。そうね、今ならまだ下さいって言うならあげてもいいわ」


「いらん。て言うか、お前それどこから出したんだ?」


 確かノノは家財一式失って手ぶらで来たはずだ。


「言って無かったかしら、あたしも魔法の収納を持ってるのよ。少ししか物は入らないけど、強力な魔道具を幾つか入れてたのよ。さっきまですっかり忘れていたけど」


 オブやノノのような長く生きて来た連中は記憶力が退化してるのだろうか? アンを含めて記憶力なさ過ぎだろ、脳みそ鳥さんなのか?


 それにしてもなんでコイツは執拗にオーブを僕に渡そうとするのだろうか? やっぱり呪いなのか?


「ザップ、おかしい! 絨毯の高度が下がっている。このままじゃ墜落するよ!」


 ラパンが慌てた声を上げる。


「ザップ、あんたがとっとと受け取らないからよ。墜落したくなかったら、早くタマタマを収納にしまうのよ」


 なにっ、コイツのそのキモいオーブが原因なのか? しかもこれって脅迫だよな? やむなく、その玉を収納にいれる。


「よかった。絨毯、もとに戻ったみたいだよ。どうも、さっきここらの魔力がノノが持ってた玉に吸いこまれているようにみえたんだけど?」


「さすがね、よく解ったわね。これは『吸魔の玉』。辺りにある魔力を吸い取る魔道具よ。しかもそのあとたまった魔力を使えるという優れものよ。これをザップの収納に入れておけば、収納内にある魔力を吸収してくれるわ。ザップ、あんたのMPだと、あの魔法1発でヘロヘロでしょ。これには多分ちょうど1発分はMP蓄えられるはずよ」


 まじか、それは有難い。あれって、もしかしてかなり貴重なものなのでは?


「ありがとう」


 僕は素直に礼を言う。


「ザップ、あれは不用意に出さない事よ。あれは満タンになってもずっと魔力を吸い続けるから、辺り一面広野になってしまうわよ」


 ん、なんだそりゃ。やっぱり呪いのアイテムだったのか。


 それよりも、今結構ラパンが騒いだし、絨毯も揺れたのに誰も起きなかったな。大丈夫かコイツら冒険者として……

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