破壊
「ザップー、大丈夫ーっ? 何、なんだったのあれー?」
上の階の削れた縁からマイがこっちを覗いている。良かった。マイたちは無事だったみたいだな。
「大丈夫だ。それより、何かロープみたいなものないか?」
「あるわよ。どうするの?」
「とりあえず、こっちに投げてくれ。ノノが悲惨な事になっている」
僕の隣で多分全裸で埋まっているノノをどうにかしないと。こりゃ、息できてねーだろ。さすがに女の子だと思われるから、僕が掘り出すのは躊躇われる。なんか白い砂に埋まってる僕の体もビリビリする。少し砂を舐めてみる。しょっぺー。これ、砂じゃなくて塩だわ。なんかお尻や変な所はビリビリじゃなくてジガジカする。いかん、このままだとノノが生ハムになっちまう。まず、僕は勢いよく白い砂もとい塩から華麗に抜け出すと、収納からパンツを出して履く。そして予備の服を出して着る。良かったこれで、なんとか太古を卒業して文明人になれた。
「ザップ、受け取れ」
上からピオンがロープを投げてくれる。僕はそれをプニプニのノノの足に括り付ける。
「こいつを引き上げてくれ」
僕は目を瞑ってそっぽを向く。
「うわ、可哀想……」
マイから憐憫の声が漏れる。僕は見てないけど、想像はつく。ノノは悲惨な格好で引き上げられてんだろな。
「ザップー、ノノちゃんの救出おわったわ」
僕は目を開け、次に引き上げてもらう。
「あ、あたしの本たちが……」
マントを羽織ったノノが呆然としている。ここはさっきいた屋上だ。床には丸い穴が空いている。暴発した魔法は僕がオーブに触れた部屋を中心に隣の書庫とノノの生活空間をまるっと消滅させてしまった。ここからマイは下をのぞき込んでいた。
気絶していたノノが起きるまで、僕たちは今までのことを擦り合わせしていた。マイたちは僕が変な異界で魔法の修練をしていた時には、書庫で片っ端から読める言葉で書かれた本を収納にぶっ込みまくってたそうだ。ちなみにそれを発案したのはラパンだ。後でノノには了解を取るつもりだったらしい。さすがラパンちゃっかりしている。まあ、けど、それが幸いして本の全滅は免れたんだけど。マイたちがそうこうしてるうちに、ミネアが異様な魔力の高まりを感じて元来た道を逃げたそうだ。それでなんとか4人は全裸塩漬けを免れたそうだ。良かったと思うけど、本音は少し残念だ。まあ、僕も成人男性だからしょうがない。
「あたしの家を駄目にしたんだから、あんたあたしに衣食住の世話しなさい」
ノノが僕に指をビシッと突き付ける。僕はマイを見る。マイは少し考えたあと、ゆっくりと首を、縦にふる。ボスの許可はおりた。飼っていいらしい。本当は嫌だけど、さすがにここにほたっとくのは少し可哀想だ。
「まあ、ゴルドランをなんとかするまでの間だけは面倒みてやるよ」
まあ、コイツは長生きしてるみたいだからなんかの役にはたつだろう。