第七十七話 荷物持ち街に戻る
「アンちゃん、なにその格好?ザップの真似?」
「違いますよ、誰が好き好んでこんな格好すると思います? 裸の方がまだましです」
僕のしばらく前の普段着を裸以下はひどすぎる。アンって時々グサリと毒吐くよな……
壊れた南大門の前で僕たちは落ち合い、マイの持ってた通行許可証で門をくぐって、ポルトの屋敷に向かう。道すがらアンがマイに服の事を説明した。
「よかった、ザップが変な事したわけじゃないのね」
「誰がドラゴン相手に変な事するか」
「わかんないわよ、アンちゃん可愛いから」
マイがやたら絡んでくる。なんでだ?
「ところで、俺が勇者アレフにやられた後、どうなったんだ?」
「私たちも、あいつに飛びかかったんだけど、そのあとの記憶が無くて、多分あたしたちも斬り伏せられたんだと思うわ」
マイは服のお腹の所を摘まむ。そこは真一文字に服が切り裂かれている。
「私の服も斬られてたんですけど、今はもうないです。傷は多分魔法か魔法薬で治療してもらったんだと思います」
フェミニズムか、僕の怪我は放置だったのに。
「気が付いたら、綺麗なベッドに寝かされていて、部屋には太ったガマガエルのような透け透けの服を着た変態がいたわ。変態を殴って気絶させて、あたしたちは塔の上の階にいたから、アンちゃんが陽動、あたしがザップを探す事にして、アンちゃんは窓から飛び降りて変身して、あたしは衛兵さんにザップの居場所を聞いて、あとはザップと合流したわ」
その、太った変態って一体誰だろう?
王城の塔の上を使える人物。考えつくのは王か王子しかいない。もし王様だったら、諦めて他の国に行く事にしよう。
マイの案内でしばらく歩き、ポルトの屋敷に着く。その間、僕を見た人々が指差したり、僕を見てひそひそ話をしたりしてる。
もしかして、さっきのドラゴン騒動で顔が売れてしまったのではないだろうか?
また、屋敷の使用人たちに大仰に出迎えられて、ポルトの所に案内される。僕たちはポルトとテーブルを囲む。
「大変な目にあったな。本当に『ゴールデンウインド』と知り合いだったんだな」
「おいおい、しっかり話したじゃないかよ」
「お前、あんなに酔っぱらってた人の話信じられるかよ」
「確かにその通りだな……」
「ザップが『ゴールデンウインド』と揉めて勾留されたって聞くし、連れの美少女たちは第一王子に献上されたって聞いたとたんに次は城にドラゴンは現れるし、一体全体どうなってんだ?ザップ、お前は疫病神なのか?」
「すまん、全部俺たちの責任だ」
「えー、ザップは全く悪くないよ、突っかかってきたのは勇者たちだし、城で暴れたのだってあたしたちだし。あと、あの太ったガマガエルのような人第一王子だったの!殴り倒しちゃった……」
「そうだ。あいつが俺の命を狙っている第一王子だ。それで、すべてを上手く運ぶ方法が1つある」
ポルトは僕の目をじっと見つめる。
「ザップ、一度だけでいい、俺に力を貸してくれないか?」