反復
「分子分解」
魔法を放つ、全裸になるをもう何度繰り返したのだろうか。始めは少し足が沈むだけだったのが、今はくるぶしまで地面に埋まっている。その足の周りには白い粉が集まっている。
「分子分解」
少しづつ頭痛が治まっていく。始めはほぼ全てのMPを使い果たしていたと思われるが、少しづつ余裕が出来てきたのを感じる。そして、埋まる位置がくるぶしから脛とより深くなる。魔法を放つ、またその前に戻るを繰り返して、繰り返して、繰り返す。いつの間にか頭は痛く無くなっていた。そして、さらに繰り返し、僕は自分の体に存在する魔力をより明確に感じられるようになり、それを分解の光により効率良く転換出来るようになってきた。多分、この魔法は分子分解の下位魔法だろう。分解するのは無生物。それを確信したのは、足元に発生する白い粉の中から虫やミミズが出てくる事もあるからだ。
始めは無駄なクソ魔法と思っていたが、生き物に効かない分子分解、それはとっても優しさに包まれた魔法なのでは。何でも消滅させる魔法なんて、正直恐ろし過ぎる。魔法は力だ。どんな魔法でも使う者次第では強い効果を発揮出来るはずだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「分子分解!」
さらに幾度も、多分1000回は繰り返したのではないだろうか? 力の流れを体が理解して、ついに魔法の詠唱が必要無くなる。僕は無詠唱で一瞬で全裸になれるように成長した。まじで一体何に使えるんだ? 犯罪に、しかも露出系の性犯罪にしか使えないのでは……
どれだけの時間が経ったのだろうか? ノノは『一炊の夢』と言っていた。どんなに長く感じても時間はあまり経たないという。と言う事は、ここは夢の中のようなものなんだろう。
「分子分解」
さらに余裕が出てきたMPを魔法に注ぐ事で、魔法の効果範囲が広がっているみたいだ。もう魔法を放った後には腰まで地面に埋まっている。僕を中心に地面が抉れて、足元には白い粉が溢れている。もうこれって魔法をマスターしてるんじゃないか? いつまでこの地獄は続くんだ?
「分子分解、分子分解、分子分解、分子分解、分子分解、分子……分子……分子……分……分…………………………」
終わらない。終わらない。まだ、地獄は続く。もう心は疲れ果て、僕はただ作業のように魔法を使い続ける。魔法の使用を体が覚え、もう軽く念じるだけで簡単に発動出来る。
けど、光は体を覆うだけで、手から放つ事は出来ない。多分この魔法がそういう仕様なのではないだろうか。
魔法で空く足元の穴はどんどん大きくなっていく。魔法を放つ、裸で穴に落ちるを繰り返す。もう、穴は僕の背丈を超えた。と言う事はこの魔法を現実で使ったらそばにいる者も巻き込めるだろうな。魔法の強弱に気をつけて行使するようにして、繰り返しているうちにその範囲を調節出来るようになってきた。込めるMPの量で調節出来る。
それでもまだ、繰り返し続ける。いつまで続くのだろう。さっきから同じ量のMPで魔法を使い続けているのだが、穴が徐々に深くなってきている。と言う事は効果範囲が広がってるという事だ。多分、魔力の変換のロスなどが減って効率化し、少ないMPでより効果を発揮できるようになってるのだろう。それから気が遠くなる程反復して、穴の大きさが変わらなくなる。とうとう最適化されたのだろう。
ふと考える。この最適化された状態で最大級の魔法を放ったらどうなるだろうか?
僕は集中し、魔法に全てのMPを注ぎ込む。おかしい、変換された力が今までと全く別物に変わる。そうか、これが世界か。世界のあらゆるものを変質させる絶対的な力か。僕の口は自然とその魔法の名を口ずさむ。
「太古の世界」
僕から溢れて出た白い力の奔流は光り輝きながら辺り一帯を包み込んだ。
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